需要の減少・事業者の財政問題によるもの
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/02 00:43 UTC 版)
「中止したダム事業」の記事における「需要の減少・事業者の財政問題によるもの」の解説
ダム事業は1950年(昭和25年)の国土総合開発法に基づく「河川総合開発事業」や1962年(昭和37年)の水資源開発促進法に基づく「河川水資源開発基本計画」に沿っている場合も多く、そのためこれらの法律が施行された1950年代~1960年代のいわゆる高度経済成長期に計画されたダムも多い。こうしたダムでは当時の水需要に沿った計画がなされたまま事業を進めているダムも多く、水需要の変化した現在ではかえって不要・過剰な供給であることも指摘されている。かんがい用ダムについても、減反政策や第一次産業人口の減少、農業施設合理化等に伴う耕地面積の縮小により当初予測より農業用水の需要が減少する傾向が見られた。こうしたことから現在の需要と照らし合わせて実情にそぐわない事業に関しては、計画見直しに伴う事業中止もある。 これと関連して地方自治体の税収減少による財政難で、当初は事業主体としてダムを計画していたり、特定多目的ダム事業に利水で参加していながらも、巨額の負担に耐えられず事業を再検討する自治体も現れ、補助多目的ダム事業中止・凍結の他利水目的で参加していたダム事業からの撤退が利根川水系や淀川水系で相次いだ。また、発電事業にかかわるダム事業についても、当初予測した電力需要に比べて実際の電力消費量が伸び悩むケースが多々あり、こうしたことから大規模な揚水発電用ダムを建設してもコストパフォーマンスに欠け、企業経営を圧迫する可能性がある等の理由からこうした発電用ダムの建設事業が計画段階で中止となっている事も近年散見される。 これらは、経済成長の鈍化とそれに伴う税収の減少、産業構造が重厚長大型から軽薄短小型に構造転換して行ったこと。さらには大都市人口のドーナツ化現象等による減少傾向が水需要の減少・電力需要の減少に繋がっており、ダム事業のみが当時の計画のまま時代の趨勢に追い付けなかったことが背景にある。近年のダム事業中止の大半はこうした事情によるケースが多い。
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