需要の重複申告と空積み
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/06/06 04:15 UTC 版)
「ブックビルディング」の記事における「需要の重複申告と空積み」の解説
ブックビルディングの後に続くIPO銘柄の配分を求めて、一部の投資家が同一の需要を複数の証券会社に重複して申告しているという実態がある。しかしながら、そもそもブックビルディングは公開価格を発見するために行うものであり、投資家の需要に基づかない申告が積み上がってしまえば、把握される需要動向が不正確なものとなり、結果的に、IPO時の公開価格が必ずしも需要動向に合致しなくなる。現状では、同じ証券会社の中で、複数店舗での口座開設を認めていなかったり、ブックビルディング毎に名寄せを行うなどすることで需要の重複した申告を退けることができているものの、他の証券会社との間では、各証券会社で他の証券会社で需要申告をしていないことを確認することまでは行っているが、個人情報保護やIPOのスケージュールの観点から名寄せを行うことが困難であるため、重複した申告を完全に退けることは出来ていない状況にある。そのような中で、同一のIPO銘柄に対して重複して申告された需要がブックビルディングとして積み上がると、適正な価格を発見するためのツールとしてブックビルディングの結果得た需要が、実需と比較すると過大なものとなってしまう。この結果、実需から上方に大きく乖離した価格が、IPO時の公開価格とされてしまいかねない危険を孕んでいる。また、証券会社が実際には投資家からの需要がないにもかかわらず需要の申告があった、或いは、投資家から需要の申告を受けた数量を水増しして主幹事証券会社に報告するという「空積み」がなされ、ブックビルディングの結果得られる需要に基づいて定まったはずの価格が実需とかけ離れてしまっている危険もはらんでいる。このような証券会社による空積みへの対策として、各証券取引所や日本証券業協会では自主規制規則で、空積みの禁止を謳っているものの、これを行っていたという事実が証券会社内の内部監査や証券取引等監視委員会による検査、各証券取引所や日本証券業協会による考査等で摘発される事例が数多くある。このような投資家による需要の重複申告や証券会社による需要の空積みは、ブックビルディングに際して需要の申告を行うことが、慣例上、その後の配分の申込みとなっているからであるとする意見もある。
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