開集合を使った特徴づけ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/04 05:30 UTC 版)
位相空間を定式化する為に必要となる「開集合」という概念は、直観的には位相空間の「縁を含まない」、「開いた」部分集合である。 ただし上ではわかりやすさを優先して「縁を含まない」、「開いた」という言葉を使ったが、これらの言葉を厳密に定義しようとすると位相空間の概念が必要になるので、これらを使って開集合を定義するのは循環論法になってしまう。また、ここでいう「縁」(=境界)は通常の直観と乖離している場合もあり、例えば実数直線上の有理数の集合の境界は実数全体である。 そこで位相空間の定義では、「縁を含まない」とか「開いた」といった概念に頼ることなく、非常に抽象的な方法で開集合の概念を定式化する。 位相空間を定式化するのに必要なのは、どれが開集合であるのかを弁別するために開集合全体の集合 O {\displaystyle {\mathcal {O}}} を指定する事と、 O {\displaystyle {\mathcal {O}}} が定められた性質を満たすことだけである。 位相空間の厳密な定義は下記のとおりである。 定義 (開集合系による位相空間の定義) ― Xを集合とし、 O {\displaystyle {\mathcal {O}}} をXのべき集合 P ( X ) {\displaystyle {\mathfrak {P}}(X)} の部分集合とする。 O {\displaystyle {\mathcal {O}}} が以下の性質を満たすとき、組 ( X , O ) {\displaystyle (X,{\mathcal {O}})} を X を台集合とし O {\displaystyle {\mathcal {O}}} を開集合系とする位相空間と呼び、 O {\displaystyle {\mathcal {O}}} の元を X の開集合と呼ぶ。 ∅ , X ∈ O {\displaystyle \emptyset ,X\in {\mathcal {O}}} ∀ O 1 , O 2 ∈ O : O 1 ∩ O 2 ∈ O {\displaystyle \forall O_{1},O_{2}\in {\mathcal {O}}~~:~~O_{1}\cap O_{2}\in {\mathcal {O}}} ∀ { O λ } λ ∈ Λ ⊂ O : ⋃ λ ∈ Λ O λ ∈ O {\displaystyle \forall \{O_{\lambda }\}_{\lambda \in \Lambda }\subset {\mathcal {O}}~~:~~\bigcup _{\lambda \in \Lambda }O_{\lambda }\in {\mathcal {O}}} 上述の定義に登場する3つの条件の意味するところは下記のとおりである: 空集合と全体集合は開集合である。 2つの開集合の共通部分は開集合である。(よって有限個の開集合の共通部分は開集合となるが、無限個の共通部分は開集合とは限らない) 任意の個数(有限でも無限でもよい)の開集合の和集合は開集合である。 本節では、これらの性質を天下り的に与えるにとどめ、後の章で距離空間で具体的な位相に関し、この定義について論ずる。 開集合系 O {\displaystyle {\mathcal {O}}} を一つ定める事で、集合 X が位相空間になるので、 O {\displaystyle {\mathcal {O}}} をX 上の位相(構造)と呼ぶ。 紛れがなければ開集合系 O {\displaystyle {\mathcal {O}}} を省略し、X の事を位相空間 と呼ぶ。 また位相空間X の元を点と呼ぶ。 なお、集合算に関する空積および空和はそれぞれ全体集合と空集合になるので、 O ≠ ∅ {\displaystyle {\mathcal {O}}\neq \emptyset } を仮定しておけば、上述の定義における条件1を課さなくてもよい。
※この「開集合を使った特徴づけ」の解説は、「位相空間」の解説の一部です。
「開集合を使った特徴づけ」を含む「位相空間」の記事については、「位相空間」の概要を参照ください。
- 開集合を使った特徴づけのページへのリンク