開集合条件
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/14 10:21 UTC 版)
(特定の場合の)自己相似集合 A の次元を決定するためには、縮小写像列 ψi に関する「開集合条件」と呼ばれる技術的な条件を必要とする。 条件 (開集合条件) 相対コンパクト開集合 V が存在して ⋃ i = 1 m ψ i ( V ) ⊆ V {\displaystyle \bigcup _{i=1}^{m}\psi _{i}(V)\subseteq V} が成り立つ。ただし、左辺の和に現れる集合族はどの二つも互いに交わらないものとする。 開集合条件は、像 ψi(V) たちが「重なり過ぎない」ことを保証する分離条件になっている。 定理 開集合条件が満足され、各 ψi が相似変換、すなわち等長変換と適当な点を中心とする拡大変換(英語版)の合成であるとき、ψ の唯一の不動点はハウスドルフ次元 s を持つ集合である、ただし s は ∑ i = 1 m r i s = 1 {\displaystyle \sum _{i=1}^{m}r_{i}^{s}=1} の唯一の解である[要ページ番号]。相似変換の縮小係数はこの拡大変換の大きさに一致する。 この定理を用いてシェルピンスキーの三角形(シェルピンスキーのガスケット)のハウスドルフ次元を計算することができる。平面 R2 上の同一直線上にない三点 a1, a2, a3 を考え、ψi を ai を中心とする拡大比 1/2 の拡大変換とする。この写像 ψ に対応する空でない唯一の不動点がシェルピンスキーのガスケットであり、次元 s は ( 1 2 ) s + ( 1 2 ) s + ( 1 2 ) s = 3 ( 1 2 ) s = 1 {\textstyle ({\tfrac {1}{2}})^{s}+({\tfrac {1}{2}})^{s}+({\tfrac {1}{2}})^{s}=3({\frac {1}{2}})^{s}=1} の一意な解である。両辺の自然対数を取れば s について解くことができて、s = ln(3)/ln(2) を得る。シェルピンスキーのガスケットは自己相似かつ開集合条件を満たすことに注意。一般に、写像 A ↦ ψ ( A ) = ⋃ i = 1 m ψ i ( A ) {\textstyle A\mapsto \psi (A)=\bigcup _{i=1}^{m}\psi _{i}(A)} の不動点となる集合 E が自己相似となるための必要十分条件は、どの二つの交わりに関しても H s ( ψ i ( E ) ∩ ψ j ( E ) ) = 0 {\displaystyle H^{s}(\psi _{i}(E)\cap \psi _{j}(E))=0} が成り立つことである。ただし s は E のハウスドルフ次元で、Hs は s-次元ハウスドルフ測度とする。これはシェルピンスキーのガスケットの場合には明らか(交わりはちょうど点になるから)であるが、より一般に次も成り立つ: 定理 前の定理と同じ条件のもとで、ψ の唯一の不動点は自己相似である。
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