開門に関する最高裁判決
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/08 15:52 UTC 版)
「諫早湾干拓事業」の記事における「開門に関する最高裁判決」の解説
福岡高裁は「2013年12月20日までの開門」を命令し(上告せず2010年12月に判決確定)、長崎地裁は「当面開門しないこと」を命令(2013年11月仮処分命令)した。国は基本的に開門しない方向であったが、菅首相が上告を見送ったことにより、国は相反する司法判断を突き付けられることになった。いずれを優先するか明確な取り決めはなく、その後も裁判が続くことになる。農水省での開門問題の対処は、諫早市への出向経験もあり、2015年から農村振興局長を務めた末松広行が陣頭指揮を執った。 いったんは「水門を開けろ」と判決を下した福岡高裁は逆に、2015年9月の長崎地裁の上告審判決では「漁業被害と、開門しないこととの間に因果関係は認められない」として開門を求める漁業関係者の請求を退けた。また長崎地裁が認めた一部漁業者への賠償も取り消した。この判決を受けて、菅義偉官房長官は、改めて最高裁での統一的判断を速やかに求めていき、国が背負っている相反する義務を解消に努力する方針を示している。 2017年4月、国は漁業補償と復興のために100億円の漁業振興基金を創設して和解する提案をしたが、2018年3月、福岡高裁での和解協議で長崎県漁業者側弁護団はこれを拒否し、和解交渉は5月に打ち切られた。一方、福岡県・熊本県の漁協は国の和解案の受け入れを表明している。反対派だった佐賀県漁協も2018年5月に和解案容認の方針に転じ、残るは長崎県漁協とその同調者のみとなった。 2019年6月6日、原告団は部分に開門を行う「部分開門」の和解案を提出するが、宮本明雄諫早市長は「大雨のときだけ水門を閉めて水害を防ぐというが、そう都合よく対応できるはずはない。調節池に海水が入って農業水源として使用できなくなることには変わりなく、ありえない和解案である」としてこれを拒絶した。 2019年6月、最高裁第2小法廷(菅野博之裁判長)は、漁業側(長崎県諫早市小長井町などの漁業者を中心とした原告団)の上告を棄却し、最高裁判決では初となる「開門せず」の判断を示した。また同月、最高裁は別の原告団による開門請求裁判でも、同様に「開門せず」の判断を下した。
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