錫釉陶器
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/03 05:35 UTC 版)
錫釉は不透明で真っ白な表面を生み出し、その上に絵付けしたときに鮮やかに映える。錫釉薬を全体に施して、火にかける前に金属酸化物などで絵を描く。フレスコ画のように釉薬が顔料を吸収し、間違っても後から修正できないが、鮮やかな発色を保つことができる。時には表面にもう一度釉薬をかけ(イタリアではこれを coperta と呼ぶ)、さらに光沢を強くすることもある。光沢を増すには、低温での火入れに時間をかける必要がある。窯には大量の木材が必要とされ、陶芸が盛んになるに従って、森林伐採が進んだ面もある。釉薬の原料は砂、ワインのおり、鉛、錫である。 マヨリカ焼きに端を発した15世紀の陶芸(ファイアンス焼きと総称される)は、シチリア島経由で入ってきたイスラムの陶器の影響を受けてスズ酸化物を釉薬に加え、それまで中世ヨーロッパで行われていた鉛釉陶器の様式に革命を起こした。そのような古い陶器は「プロト・マヨリカ」などとも呼ばれる。それまで陶器の彩色はマンガンの紫と銅の緑ぐらいしかなかったが、14世紀後半にはコバルトの青、アンチモンの黄色、酸化鉄のオレンジ色が加わった。ズグラッフィートと呼ばれる技法も生まれた。これは、白い錫釉をかけた後にそれを引っかいてその下の粘土が見える部分を作り模様などを描いたものである。ズグラッフィートはペルージャやチッタ・ディ・カステッロが本場とされていたが、モンテルーポ・フィオレンティーノやフィレンツェの窯からズグラッフィートの不良品が大量に見つかっており、そちらの方が生産量が多かったことがわかった。
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