釘接合の特性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/02 16:07 UTC 版)
価格が安く、入手が容易で、施工性に優れる。 機械的接合なので、天候・気候に左右されずに使える。 大量に打つ場合は、自動釘打機を使うことで作業効率が劇的に向上する。この場合、1秒に1本程度の速度で打つことも可能である。ただし、自動釘打機を使うと、釘頭が材にめり込んでしまう場合が多い。これを防ぐためにも、自動釘打機の空気圧を適切に調整する必要がある。 特記なき限り、釘長さは材厚の2.5倍以上とする。 釘はせん断強度には優れているが、引張り強度にはやや劣る。従って、力の掛かる方向に対して直角方向に打ち込むのが基本である。 釘1本当たりの強度は低いが、多数の釘を打ち込むことで高い強度を発揮する。特に耐力壁や耐力床に関しては、構造用合板などのボード類を、釘種類と釘間隔を守って取り付けることで、容易に高強度の壁や床を作ることができる。また、木材同士の継ぎ手でも、両側面から構造用合板や薄鋼板などを添えて多数の釘を打ち込むことで、容易に高強度の継ぎ手を作ることができる。 打ち込まれたすべての釘は木材に密着しているため、初期剛性が高い(ガタを生じない)。これに対し、ボルト接合やドリフトピン接合は、先穴をあけるため、初期剛性が低い(ガタを生じる)。 せん断による破壊性状は、釘が横方向に変形しながら、すべり出して抜けるようにして破壊してゆく。釘が抜けきるまでは強度を維持し続けるので、大変形時でも粘り強さを発揮する。釘が抜けた時、破壊に至る。これに対し、ボルト接合は、いわゆるロープ効果により抜けることがないので、さらなる大変形に耐えることができる。 構造用合板などのボード類に釘を打ち込む場合、釘頭がボード類にめり込んでいると、釘が抜けず、ボード類を貫通するようにして破壊する(パンチングアウト破壊)。この場合、小変形で破壊し、強度はほとんど発揮されない。従って、特にボード厚さが薄い場合、釘頭のめり込みは厳禁である。万一めり込んだ場合、その釘を無効とし、近傍に新しい釘を打ち直す。またはめり込んでも良いぐらい、十分な厚さのボード類を使用する。 木材に先穴をあける必要がないので、木材の強度を低下させることはない。ただし、釘間隔を近接しすぎたり、木材の端部に近い場所に打ったりすると、木材が割れ、かえって強度を低下させる。このため、日本建築学会では最小間隔と最小縁距離を規定している。 板に対する釘配置等の最小間隔(dは釘の胴部径を表す)加力が繊維方向の場合加力方向釘間隔12d 端距離15d 加力に直角方向釘列間隔5d 縁距離5d 加力が繊維に直角方向の場合加力方向釘間隔8d 縁距離8d 加力に直角方向同一繊維上釘間隔10d 端距離10d 釘接合と他の接合(ボルト接合・ドリフトピン接合等)は、根本的に抵抗のメカニズムが違うため、それぞれの強度を加算することはできない。
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