重なり積分
重なり行列
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/29 15:27 UTC 版)
重なり行列(英: overlap matrix)は、量子化学において使われる正方行列である。分子の電子構造計算において用いられる原子軌道基底関数系といった量子系の一連の基底ベクトルの相互関係を記述するために用いられる。具体的には、もしベクトルが互いに直交しているとすると、重なり行列は対角行列となる。加えて、もし基底ベクトルが正規直交系を形成するとすると、重なり行列は単位行列となる。重なり行列は常にn×n行列(nは用いられる基底関数の数)である。これはグラム行列の一種である。 一般に、個々の重なり行列要素は1つの重なり積分として定義される。 S j k = ⟨ b j | b k ⟩ = ∫ Ψ j ∗ Ψ k d τ {\displaystyle S_{jk}=\langle b_{j}|b_{k}\rangle =\int \Psi _{j}^{*}\Psi _{k}\,d\tau } 上式において、 | b j ⟩ {\displaystyle \left|b_{j}\right\rangle } は、j番目の基底ケット(ベクトル)、 Ψ j {\displaystyle \Psi _{j}} は、 Ψ j ( x ) = ⟨ x | b j ⟩ {\displaystyle \Psi _{j}(x)=\left\langle x|b_{j}\right\rangle } と定義されるj番目の波動関数である。 具体的には、基底系が正規化されると(直交である必要はない)、対角要素はあらゆる点で等しく1となり、非対角要素の大きさは、コーシー=シュワルツの不等式の通り基底系において一次従属がある時かつその時に限り、1以下となる。さらに、この行列は常に正定値行列である。すなわち、固有値は全て厳密に正の値となる。
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