重ね合わせとの違い
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/20 03:21 UTC 版)
混合状態の「混合」とは量子力学的な状態の重ね合わせではない。これを偏光の例で説明する。光子には右円偏光と左円偏光がある。以下、右偏光と左偏光をそれぞれ純粋状態 | R ⟩ {\displaystyle |R\rangle } 、 | L ⟩ {\displaystyle |L\rangle } で表すことにする。 量子力学では状態の重ね合わせが可能なので、ある光子の | R ⟩ {\displaystyle |R\rangle } の状態とこれと同じ光子の | L ⟩ {\displaystyle |L\rangle } の状態を1/2ずつ重ね合わせると、光子は | R ⟩ + | L ⟩ 2 {\displaystyle {|R\rangle +|L\rangle \over 2}} という状態になる。これを規格化すれば | R ⟩ + | L ⟩ 2 {\displaystyle {|R\rangle +|L\rangle \over {\sqrt {2}}}} である。この状態にある光子は垂直方向に偏光であり、垂直方向の偏光板は通過できる。 これに対し、無偏光の状態にある光は、上記のような重ね合わせでは表現できず、混合状態によって記述する必要がある。無偏光の光とは例えば、光に含まれる複数の光子のうち50%の光子が | R ⟩ {\displaystyle |R\rangle } の状態にあり、これらとは別の光子である残り50%の光子が | L ⟩ {\displaystyle |L\rangle } の状態にある場合である。このような状態にある光の中に重ね合わせ状態 ( | R ⟩ + | L ⟩ ) / 2 {\displaystyle (|R\rangle +|L\rangle )/{\sqrt {2}}} の光子は存在しない。また上述の状態にある光は横向きの偏光板を完全に通過するが、縦向きの偏光板にはある程度吸収されるなど、物理的性質も ( | R ⟩ + | L ⟩ ) / 2 {\displaystyle (|R\rangle +|L\rangle )/{\sqrt {2}}} とは異なる。 このような「50%が | R ⟩ {\displaystyle |R\rangle } 、残り50%が | L ⟩ {\displaystyle |L\rangle } 」という統計的な状態、すなわち個々の粒子が「確率1/2で | R ⟩ {\displaystyle |R\rangle } 、確率1/2で | L ⟩ {\displaystyle |L\rangle } 」となっている状態を記述するのが混合状態である。
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