酵母のオートファジー
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/18 09:41 UTC 版)
「オートファジー」の記事における「酵母のオートファジー」の解説
1992年に大隅良典(当時東京大学教養学部助教授)らは出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)でのオートファジーを初めて観察した。 液胞はリソソームと似た性質を持つ小器官で多数の加水分解酵素を内在しており、出芽酵母においては細胞体積の25%以上を占める最大のコンパートメントである。また、出芽酵母は窒素源が枯渇すると減数分裂と胞子形成を起こすが、液胞の加水分解酵素を欠損した株は胞子形成が不全になる事が知られており、液胞が栄養飢餓状態で重要な生理機能を持つことが示唆されていた。 これらの事に着目した大隅らは、タンパク質分解酵素欠損株を飢餓状態にして観察した。大隅の予想は当たり、タンパク質分解酵素欠損のため分解されずに液胞に蓄積した小さな顆粒状のものがブラウン運動で激しく動き回っているのを認めた。 電子顕微鏡を用いた更なる観察により次のような事が判明した。顆粒は一重膜の構造体であることが示され、オートファジックボディーと名付けられた。飢餓に応答して隔離膜が出現し、膜の伸長と共に細胞質のタンパク質などを取り囲みオートファゴソームを形成する。オートファゴソームは直ちに液胞と融合する。融合時にオートファゴソームの外側の膜と液胞の膜が融合し、オートファゴソームの内側の膜に囲まれた部分が液胞に放出され一重膜のオートファジックボディーとなる。出芽酵母で観察された、これら一連の膜動態はド・デューブの提唱したオートファジー現象そのものであった。
※この「酵母のオートファジー」の解説は、「オートファジー」の解説の一部です。
「酵母のオートファジー」を含む「オートファジー」の記事については、「オートファジー」の概要を参照ください。
- 酵母のオートファジーのページへのリンク