過失犯の共同正犯
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/11 05:50 UTC 版)
過失犯の共同正犯が問題となる事例では、各人に過失犯の単独正犯が成立している場合が多いが、各人の行為と結果の間の因果関係が立証できない場合もあり、過失共同正犯が成立しないかが問題とされる。 過失共同正犯の成否については、「共同実行の事実」の成否と「共同実行の意思」の成否が問題となる。 「共同実行の事実」の成否には、過失犯に関する新旧過失論の立場が影響する。 旧過失論の立場では、過失は責任段階での問題にすぎないから、構成要件段階での過失行為の共同は認めがたい。しかし、新過失論によれば、構成要件段階での過失の実行行為を観念できるから過失行為の共同も可能といえる。有力学説によれば、行為者に共同注意義務があるときは過失行為の共同が認められるとされる。 「共同実行の意思」が過失犯で認められるかについて、 従来、過失犯の共同正犯の成立は共同正犯の成立要件として意思の連絡を必要とするかの議論に帰結すると考えられてきた。犯罪共同説の立場からは、過失犯は無意識を本質とするから共同実行の意思が認められず、過失犯の共同正犯は成立しないとされた。一方伝統的な行為共同説の立場からは共同正犯の成立には意思の連絡は不必要であるから、過失犯の共同正犯の成立に問題はないとしてきた。 他方、過失は一次的には無意識的はものであるが、二次的には一定の主観的心情・心理状態とあいまって発現するものであり、過失犯において心情・心理状態も重要な要素であり、これについては相手の行為を利用しあう意思ないし意識を認め得る として犯罪共同説・行為共同説にかかわらず共同実行の意思を認める説もある。
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