辻が花染
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/01 21:03 UTC 版)
近世初期を代表する染織品が辻が花である。室町時代末頃から江戸時代初期の比較的短期間に作られ、その後途絶えており、現存作品数は断片を含めても300点足らずである。こうしたことから、「幻の染物」と称されている。辻が花は縫い締め絞りを主体として、これに描絵、刺繡、摺箔などの加飾を加えたもので、地はこの時代の特有の練貫地を多く用い、製品の種別としては小袖と胴服が大部分である。「辻が花」という言葉の語源ははっきりしない。14世紀末から15世紀初めの成立とされる絵巻『三十二番職人歌合』には、「桂女」の詠歌として「春かぜに わかゆ(若鮎)の桶をいただきに たもともつじが はなををるかな」とあり、これが「つじがはな」の語の初見とされている。この絵巻に描かれた桂女は、上着の長い袖を折り返して着用しているように見え、これが「つじがはなを折る」を図示したものとも言われている。このように「つじがはな」という言葉自体は室町時代から存在したが、その語源ははっきりせず、染色技法の名称としての「辻が花」も今日とは意味合いが異なっていた。1603年頃の編纂である『日葡辞書』の「つじがはな」の項によると、当時「つじがはな」と呼ばれていたのは麻で織った帷子の類であり、「辻が花」が前述のような縫い締め絞りの製品を指すようになったのは明治時代のことである。
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