贋作の議論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/07 04:10 UTC 版)
「ネフェルティティの胸像」の記事における「贋作の議論」の解説
フランスで出版されたスイス人美術学者アンリ・スティルランの『ネフェルティティの胸像は偽物か? (Le Buste de Nefertiti - une Imposture de l'Egyptologie?)』などが、『ネフェルティティの胸像』は現代で作られた偽物だと主張しはじめた。スティルランは、ボルヒャルトは古代に使われていた顔料を試す目的で胸像を作成したとして、ザクセン王子ヨハン・ゲオルクがこの胸像を賞賛したために、ボルヒャルトは王子を怒らせないよう胸像が本物であると見せかけたのだという説を唱えた。スティルランは、片目の胸像は古代エジプトではそもそも不敬であり、発見したとされる年から11年もの間に科学的根拠ある記録がまったく残っていないのは不自然だと主張した。さらに、使用されている顔料は確かに古代エジプトのものかも知れないが、芯に使用されている石灰岩は一度も年代測定されたことがないと指摘している。同じく胸像が偽物であると考えているベルリンの作家・歴史研究家 Edrogan Ercivan も、胸像はボルヒャルトの妻をモデルとして作成されたものだとして、1924年まで公開されなかったのは『ネフェルティティの胸像』が偽物だからであると主張した。このほかにも、現在の胸像はヒトラーの命により1930年代に作成されたもので、オリジナルの胸像は第二次世界大戦で失われたとする説などもある。 ディートリヒ・ヴィルドゥングは胸像が偽物であるという主張は売名行為であり、放射線測定、CTスキャン、構成材料の調査などの科学的検証が、この胸像の信憑性を保証していると一蹴した。胸像に使用されている顔料は古代エジプトの芸術家が使用していた顔料と同一であるのは間違いない。『Science News』によれば、2006年のCTスキャンで発見された「隠れた顔」こそが、疑問の余地なく本物であることを証明している。 エジプト側もスティルランの説を相手にしていない。ハワスは「スティルランは歴史家ではない。頭がどうかしている」と語ったことがある。スティルランの主張の根拠の一つでもある、ほかの古代エジプトの像の肩が水平にカットされているのに対して『ネフェルティティの胸像』の肩が垂直にカットされているのはおかしいという点についてハワスは、胸像に見られる新しい様式は夫で王のアメンホテプ4世が導入した変革の一部に過ぎず、また片目の像が不敬であるとの点に関しても、もともとは両目があったが後に失われたものだと反論している。
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