諸国の共通利益を害する犯罪
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/26 03:04 UTC 版)
「国際犯罪」の記事における「諸国の共通利益を害する犯罪」の解説
多くの国々にとって共通に法益を侵害する行為であるため、条約や慣習国際法といった国際法により処罰すべき行為と定められていて、これを受けて各国が国内法を制定しこれにより処罰される犯罪を「諸国の共通利益を害する犯罪」と言う。例えば海賊行為、奴隷取引、麻薬・向精神剤取引、海底電線損壊といった海上犯罪(国連海洋法条約第7部)、戦争の法規慣例違反、戦争犠牲者保護条約の重大な違反行為の処罰(第1条約第49条、第3条約第129条)、特定生物種の取引・捕獲の取り締まり(ワシントン条約、ボン条約)がこれに該当する。特に海賊行為は、すべての国に対して海賊を訴追・処罰する権能を与えるとする普遍主義が古くから採用されてきた。さらに国際テロリズムに関する多数国間条約では、普遍主義を採用するだけでなく条約締約国に犯罪の訴追・処罰のための義務を課している。たとえば航空機不法奪取防止条約では、締約国にハイジャック犯を厳重に処罰する義務を課し(第2条)、(a)航空機の登録国、(b)犯人を乗せたままその航空機が着陸した国、(c)賃貸航空機の場合賃借人が主たる営業所を置く国、(d)容疑者を自国領域内で発見した国や容疑者の身柄を自国領域内で抑留している国、こうした国には必要な国内措置を取る義務が課された(第4条)。とくに上記(d)に該当する国には、(a)(b)(c)いずれかの国に容疑者を引き渡すか、引き渡し先の国で実効性のある処罰を期待できない場合には自国で処罰する義務が課される(第7条)。このような、容疑者が領域内に所在する国に対して「引渡しか訴追か」を選択する義務を課す方式は、このほかに爆弾テロ防止条約、テロ資金供与防止条約でも採用されており、「諸国の共通利益を害する犯罪」について規定する多くの条約に採用されている方式である。
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