調査と保護の歴史
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/13 15:19 UTC 版)
澄江の化石産地は雲南省玉渓市澄江市にある。その澄江市は雲南省都の昆明市からは東南に60 km離れている。その澄江の帽天山周辺は、20世紀初頭には化石生物の産地として、フランス人研究者オノレ・ラントノワ (Honoré Lantenois)、ジャック・ドプラ(フランス語版)、アンリ・マンシュイ (Henri Mansuy) らが調査を行なっていた。この調査で軟体性の生物の化石が発見されており、カンブリア紀のクンミンゲラ(英語版)の存在も報告されていたが、大きく注目されることはなかった。 いわゆる澄江動物群の産地として本格的な調査が始まるのは1984年以降のことである。この年の6月から帽天山の調査に当たっていた古生物学者の侯先光が、7月1日に未知の生物の軟体部を発見したのを契機に、次々と新たな軟体部の化石を発見したのである。当初の調査に引き続いて、1990年頃まで断続的に調査が重ねられ、調査範囲も周辺の馬鞍山、小濫田村付近などに拡大された。その成果が段階的に公表されたことで、重要性が広く認知されるようになった。未知の生物群が発見されたことはもちろん重要だが、ハルキゲニアなどの既に存在が知られていた生物についても、後述するように重要な知見をもたらした。 1990年代に入ると南京地質古生物研究所などによる組織的な調査も行なわれるようになり、1999年には西北大学の舒徳干が、ミロクンミンギア属とハイコウイクチス属という2つの脊椎動物の化石を発見し、カンブリア紀に脊椎動物はいなかったとする従来の認識を覆した。なお、この発見に関する論文は『ネイチャー』に掲載されたが、のちに侯などからはハイコウイクチス属はミロクンミンギア属と同一の属とすべきであるとの見解が示された。 カンブリア紀は膨大なリンの鉱床が形成された時期でもあり、どのような関連性かは解明されていないが、当時の進化とリン酸塩には何らかの関連性があると考えられている。澄江の化石産地周辺もリン鉱石を産出し、かつてはその採掘が行われていた。しかし、2008年までに、世界遺産登録範囲周辺の緩衝地域では、かつて行われていた14箇所でのリン採掘はすべて停止された。一帯は公有地となっており、中国の国内法で保護されているほか、帽天山周辺の地区は雲南省澄江国家地質公園という名称でジオパークにもなっている。
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