設定とトリック
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/09 14:41 UTC 版)
赤塚隆二(元朝日新聞社山口総局長)は、自著『清張鉄道1万3500キロ』(2017年)で『万葉翡翠』について分析し、設定とトリックについて触れている。赤塚は3人の学生が1回目の調査で乗車した列車について、新宿駅22時45分発の「穂高3号」と推定した。松本に着いた後、今岡と岡村は大糸線に乗るが、杉原は篠ノ井線経由で信越線と飯山線に乗り換えた後に越後外丸で下車し、松之山温泉方面へのバスで東頸城丘陵に向かっている。この行程について赤塚は「乗り鉄者としての疑問」として「信越線で長野に来るか、上越線で越後川口まで来たらどうだろう」と記述している。 2回目の調査では、杉原は長野に向かわずに1列車遅れて今岡と岡村の後を追う。赤塚は同じく清張の作品『地方紙を買う女』(1957年)との類似に着目して、「同じ線区をわずかな間をおいて乗るので、「時間差型」とでも呼べる乗り鉄犯罪だ」と指摘した。 犯罪発覚のきっかけとなるのは、フジアザミの花である。フジアザミは日本固有種で富士山を基準産地とし、大きめの頭花を下向きに咲かせる花であるが、生育域は限定されていて姫川の流域には生育しないとされる。桑原みち子と短歌雑誌の選者とのやり取りを読み、多美子は2回目の調査に出かける3人を見送った際の杉原の行動を思い起こす。 杉原がリュックを背負った少年から受け取った紙包みには、まさしくフジアザミの種が入っていた。赤塚は少年が富士山麓でフジアザミの種を収集して私鉄で大月まで戻り、その後東京に戻って杉原と会ったものと推定した。作中での杉原の自供も、そのことを裏付けている。
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