表面反応のメカニズム
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/16 04:22 UTC 版)
典型的なALDプロセスでは、基板はガス反応体(プリカーサ)AとBに順番に、反応体同士が互いに混合しないように暴露される。薄膜成長が安定した状態で進行する化学気相成長(CVD)のような他の成膜技術と異なり、ALDでは各々の反応体が基板表面と自己制御的に反応する。反応体分子は表面の決まった数の反応性部位としか反応しないためである。 表面の反応性部位が全て反応体Aで埋められると、膜成長は止まる。残ったA分子は排出され、今度は反応体Bが導入される。AとBに順番に暴露されることで薄膜が堆積していく。従ってALDプロセスと言った時には、それぞれのプリカーサの供給回数(基板表面に1種類のプリカーサが暴露される回数)とパージ回数(供給と供給の間に余剰プリカーサを排出する回数)の両方を指し、二成分の供給-パージ-供給-パージの連続がALDプロセスを構成する。また、ALDの場合には成長率、いわゆるデポレートの考え方よりもむしろサイクルあたりの成長という観点から説明される。 ALDでは、各反応ステップにおいて十分な時間が確保されれば、全ての表面反応性部位に対しプリカーサ分子が完全に吸着すると考えられ、それが達成されればプロセスは飽和状態となる。このプロセス時間はプリカーサの圧力と固着確率の二つの要因に依存する。 そのため、単位表面積あたりの吸着率は以下のように示される。 R a b s = S × F {\displaystyle R_{abs}=S\times F} R {\displaystyle R} – 吸着率 S {\displaystyle S} – 固着確率 F {\displaystyle F} – 入射分子の流束 しかしALDの重要な特性として、Sは経時により変化する。プリカーサ分子が表面に吸着すればするほど、固着確率は低下し、やがて飽和に達するとゼロになる。 具体的な反応メカニズムは個別のALDプロセスに強く依存する。酸化物、金属、窒化物、硫化物、カルコゲン化物、フッ化物を成膜する数百のプロセスが可能となっており、ALDプロセスの機構的側面の解明は研究が盛んな領域である。代表的な例を以下に示す。
※この「表面反応のメカニズム」の解説は、「原子層堆積」の解説の一部です。
「表面反応のメカニズム」を含む「原子層堆積」の記事については、「原子層堆積」の概要を参照ください。
- 表面反応のメカニズムのページへのリンク