衝突が与える影響
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/11 03:55 UTC 版)
互いに衝突する二天体のサイズが大きく異なり、衝突・被衝突を区別できる場合、衝突する側の天体を衝突天体(impactor; インパクタ)、衝突される側の天体をターゲット天体(target)と呼ぶ。ここではターゲット天体に及ぼす影響について論じる。 地球のような大気のあるターゲット天体への天体衝突では、大気による空力加熱が衝突天体に生じる。一般に、天体が大きく、遅いほど空力加熱による蒸発に時間がかかり、大気圏内での加熱でも分解・気化(蒸発)しきらず、地上まで形を保つものもある。これが隕石である。そうした隕石が陸地に落ちた場合、人類によって発見されたり、衝撃によってクレーターを形成したりすることがある。なお、大気が無い場合は、衝突天体は空力加熱による蒸発および減速を経験しないままターゲット天体の地表面に到達し、衝突エネルギーに応じたクレーターを形成する。 大規模なクレーターができるほどの天体衝突が起きた場合、衝突天体から供給された物質と、衝撃でターゲット天体から飛散した物質とが舞い上がる。これをイジェクタ(英語版)(衝突放出物)という。このイジェクタが降り積もることで、クレーター周辺にはイジェクタブランケット(英語版)と呼ばれる特徴的な堆積地形を形成することがある。ターゲット天体に大気がある場合は、細かいイジェクタ粒子が大気に滞留して全球的に拡がることもあり、この場合、ターゲット天体の地表の広い範囲にイジェクタ粒子を含む新たな地層が形成される。こうしてできた地層を、イジェクタ層と呼ぶ。この地層には、衝撃変成作用(英語版)を受けた鉱物が含まれていたり、イリジウム異常(英語版)が観察されたりすることがある。 大規模な天体衝突は、局地的な衝突加熱を引き起こしたり衝撃波を発生させる。地球の場合は、落下地点が海洋である場合は津波を、比較的浅い水域や陸地である場合は舞い上がった粉塵が太陽光を遮断することによる気温の低下(隕石の冬)を引き起こし、生物に甚大な被害を与える。恐竜やアンモナイトなどが絶滅したK-Pg境界は、中生代白亜紀末に直径約10kmの天体がメキシコ・ユカタン半島に衝突したことで引き起こされたと考えられている。このように、大量絶滅には天体衝突が原因と推定されるものもある。 さらに巨大な天体が衝突した場合、大規模な衝突加熱によってターゲット天体の固体表面が全溶融したり、ターゲット天体の周領域にイジェクタによるデブリ円盤(英語版)を生じ、月のような衛星を形成すると考えられている(ジャイアントインパクト説)。また、天王星の自転軸が大きく傾いているのは、過去に惑星サイズの天体が衝突したためとも言われている。このような大事変を伴う天体衝突は、太陽系の歴史の初期にしばしば起こっていた。
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