菩提樹 リンデンバウムとは? わかりやすく解説

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菩提樹 リンデンバウム

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/29 07:56 UTC 版)

菩提樹 リンデンバウム
監督 山口和彦
脚本
原作 大和和紀
出演者
音楽 加藤和彦
撮影 奥村正祐
編集 椙本英雄
製作会社
[1]
配給 東映
公開 1988年8月6日
上映時間 90分
製作国 日本
言語 日本語
配給収入 7.3億円[2]
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菩提樹 リンデンバウム』(ぼだいじゅ リンデンバウム)は、大和和紀少女漫画『菩提樹』を原作とする[3]1988年日本映画[4][5][6][7][8]。主演・南野陽子[9]、監督・山口和彦[4]東映東京撮影所・エス・ワンカンパニー製作[注 1]東映配給。

「リンデンバウム」(Lindenbaum)は、ドイツ語で「菩提樹」の意味[10]。劇中でも早坂翼(神田正輝)が説明するシーンがある。

幼い頃に両親を亡くし、正体不明のあしながおじさんの援助で名門医大に入学したヒロインが、やがてその意外な正体を知り、葛藤する姿を描く[3][5][8]

キャスト

スタッフ

製作

南野陽子歌手としてより先に女優として成功した[9]。東映が制作したフジテレビ系のテレビドラマスケバン刑事II 少女鉄仮面伝説』でブレイクし[1][9][11]、映画デビュー作『スケバン刑事』、二作目『はいからさんが通る』とも大ヒット[1][8][12][13][14]。東映はテレビと映画で南野の売り出しに貢献した[1][15][16][17][18]。南野の三作目の映画として東映は林葉直子原作の『とんでもポリスは恋泥棒』を決定したが[19][20]、イメージの違いから南野が拒否[20]。以降二転三転し[21]、結局、『はいからさんが通る』と同じ原作者の作品の映画化になった[1][20]。東映とともに製作会社としてクレジットされているエス・ワンカンパニーは当時の南野陽子の所属事務所[22]

監督の山口和彦は漫画原作を中心とした"不良性感度映画"を散々撮っていた人で[5][23]、本作で初めて文芸調の映画に挑んだ[5]。抜擢経緯は不明だが、川本三郎は「東映では鷹森立一と並んで女優を優しく撮る監督」と評価しており[23]、ナンノの顔のアップは勿論、スーツで歩く姿などが美しいことから、早坂翼(神田正輝)の別荘を訪ねるナンノが歩くシーンの全身を右から左まで引きのカットゆっくり見せる等、目まぐるしく衣装を替えるナンノを綺麗に撮っている[8]。出色はテニスルック。

葛城柊子(松原千明)が中原麻美(南野陽子)に「ちり紙(ちりがみ)とハンカチ持ったあ?…(入学)式の前にはちゃんとトイレ行きなさいよー」と言ったり、当たり役『ふぞろいの林檎たち』とほぼ同じキャラを演じる柳沢慎吾(島田二郎)が麻美をナンパするシーンで「血液型BとBでB&Bなんちゃってねえ」と、これらは今日では意味が通じないかもしれない。麻美(南野)がその島田(柳沢)たち、グループで初コンパ酒を飲み、バイトで先に帰る森次駿(竹本孝之)に合わせて帰り、二人で雨宿りをした後、森(竹本)に自宅に行く積極的にもほどがある展開。瀬川富子(比企理恵)は見せ場なしの地味な役。

室内シーンは佐伯瑶子(結城しのぶ)がママを務めるクラブ以外はほぼセットであるが、森(竹本)が住む佐伯(結城)の部屋は、佐伯がカーテンを開けると遠くの景色が映り、実際の豪華マンションで撮影されている。ラスト近くに早坂(神田)のカルテの住所が東京都港区麻布十番3-10-〇と実在する住所が書かれている。麻美(南野)と葛城(松原)との関係はラスト近くに明かされるが弱い。

ロケ地

エンドクレジットに撮影協力として、昭和女子大学長野県八ヶ岳高原海ノ口自然郷、八ヶ岳高原ロッジ、産業能率短期大学、アドバンテック東洋化学産業(株)、久保田商事(株)、柴田化学器械工業(株)、(株)平山製作所、井内盛栄堂が表示される。

作品の評価

興行成績

薬師丸ひろ子主演の松竹ダウンタウン・ヒーローズ』と同日公開で、南野VS.薬師丸の"アイドル映画対決"と話題を呼んだ[7]。製作費5億円の『ダウンタウン・ヒーローズ』に対して本作は併映『ビー・バップ・ハイスクール 高校与太郎音頭』と合わせて製作費6億円[7][13][24]。本作は1988年9月2日までの四週間の上映に対して[25]、『ダウンタウン・ヒーローズ』1988年9月14日までの六週間の上映[26][注 2]。四週間と六週間では単純に比較出来ないが、8月末時点ではナンノが勝ったと報道する媒体もあった[7]。配給収入7.3億円と、製作費の安さを考慮すれば効率のいいヒットといえた[7]。『ビー・バップ・ハイスクール』と両作品ともビデオ販売やテレビ化権等でかなり儲けが出てたとされる[7]

批評家評

しかし東映としては10億円は行くと予想していたため[27]、1988年9月20日に東映本社で行われた『映画時報』の東映幹部の対談では反省の弁が聞かれた[27]。鈴木常承営業部長は「話が暗かった」などと[27]、小野田啓宣伝部長は「『南野陽子の方に宣伝に力を入れて下さい』と鈴木部長に頼んでいたんですが、南野陽子の方は『スケバン刑事』で出てきたので、ファンは南野陽子に対してある程度おキャンなイメージを持っていると思うんです。その意味では『はいからさんが通る』は比較的おキャンな感じが出ていたんですが、『菩提樹』は女子大生の役で、映画自体が暗い感じだったものですから、南野陽子のイメージと合わない部分があったのではないか。どんなに売れているタレントさんでも役柄とファンが持っているイメージとが合わないと上手く行かないという証明になったわけで、いい勉強をさせてもらいました」などと述べている[27]

シティロード』は「いやいや、やってくれました。&内藤誠脚本を大映テレビのノリで演出しちゃうとは山口和彦監督もおチャメだ…何で宇津井健石立鉄男が出てないの!」などと評した[28]

寺脇研は「『あしながおじさん』をモチーフにした話の筋が陳腐でシラケさせる」と評している[9]

同時上映

※「ビー・バップ・ハイスクールシリーズ」第五弾

脚注

注釈

  1. ^ エンドクレジットのオーラスに「1988 TOEI.CO.LTD.JAPAN」と東映一社のみの製作のような印象を与える。
  2. ^ 予定は1988年9月16日までだったが、2日早く打ち切られ[25]、『異人たちとの夏』夏が2日早く繰り上げ公開された[25]

出典

  1. ^ a b c d e 156.第5章「映画とテレビでトップをめざせ!不良性感度と勧善懲悪」 第28節「スケバン刑事シリーズ」 創立70周年記念特別寄稿『東映行進曲』発信! - 東映
  2. ^ 「1988年邦画4社<封切配収ベスト作品>」『キネマ旬報1989年平成元年)2月下旬号、キネマ旬報社、1989年、172頁。 
  3. ^ a b 安藤康之. “南野陽子が初々しいお嬢様役を演じた映画「菩提樹 リンデンバウム」”. スカパー. スカパーJSAT. 2025年8月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年8月8日閲覧。
  4. ^ a b 菩提樹 リンデンバウム”. 日本映画製作者連盟. 2025年8月8日閲覧。
  5. ^ a b c d 菩提樹・リンデンバウム”. 映画ナタリー. ナターシャ. 2025年8月8日閲覧。
  6. ^ 桂千穂シナリオ」1990年1月号、日本シナリオ作家協会 
  7. ^ a b c d e f 「天下泰平 ZIG・ZAG 南野VS.薬師丸"アイドル映画"夏の陣はナンノに軍配」『週刊宝石』1988年9月9日号、光文社、62頁。 
  8. ^ a b c d 菩提樹 リンデンバウムWOWOW
  9. ^ a b c d 寺脇研「第17章 80年代のアイドル映画、そして原田知世の時代 菊池桃子と南野陽子」『昭和アイドル映画の時代』光文社光文社知恵の森文庫〉、2020年、507頁。ISBN 978-4-334-78786-8 
  10. ^ リンデンバウム - コトバンク
  11. ^ 南野陽子さん/歌手・女優・司会(48歳)達人たちの「ワタシの、センタク。」【第18回】
  12. ^ 南野陽子、嫌な仕事を阿部寛に押しつけた生意気すぎる新人時代(Internet Archive)
  13. ^ a b 文化通信社編『映画界のドン 岡田茂の活動屋人生』ヤマハミュージックメディア、2012年、213頁。 ISBN 9784636885194 
  14. ^ 「PICKUP MOVEMENT 80年代の武装少女たち~その戦いの記録~」『日本不良映画年代記』洋泉社〈洋泉社MOOK〉、2016年、135頁。 ISBN 9784800309006 
  15. ^ 歴代最高の「セーラー服作品」はコレだ!ドラマ編(1)制服に意味を持たせた「スケバン刑事」(Internet Archive)
  16. ^ 東映株式会社総務部社史編纂 編『東映の軌跡』東映、2016年、303-313、346-347頁頁。 
  17. ^ 「〔特集〕女優+文芸=大作 文・金澤誠」『東映キネマ旬報 2010年春号 vol.14』2010年3月1日、東映ビデオ、3頁。 ギンティ小林+別冊映画秘宝編集部編「『スケバン刑事』と戦う美少女アイドルの時代 南野陽子」『別冊映画秘宝 80年代ガキTV&シネマ大百科』、洋泉社、2012年2月、95頁、 ISBN 9784862488763 
  18. ^ 南野陽子、嫌な仕事を阿部寛に押しつけた生意気すぎる新人時代(Internet Archive)
  19. ^ 高岩淡(東映・専務取締役)・鈴木常承(東映・常務取締役営業部長)・小野田啓 (東映・取締役待遇宣伝部長)、聞き手・松崎輝夫「本誌・特別インタビュー夏から新春へ強力布陣そろう―東映、第六十六期の大攻勢を語る」『映画時報』1988年3、4月号、映画時報社、6、12頁。 
  20. ^ a b c 「ZIG・ZAG大予想 ドル箱・南野陽子が東映から松竹へ鞍がえした"真相"」『週刊宝石』1988年11月11日号、光文社、70頁。 
  21. ^ 「邦画ニュース」『シティロード』1988年7 月号、エコー企画、38頁。 
  22. ^ 2025年7月号特集 女性アイドル1985 (22)南野陽子「さよならのめまい」 1985年アイドルHIT SONGコレクション!”. OTONANO. ソニー・ミュージックダイレクト. 2025年8月8日閲覧。
  23. ^ a b 川本三郎「プロフェッショナル・110 山口和彦」『キネマ旬報』1975年12月下旬号、キネマ旬報社、137頁。 
  24. ^ 「PICKUP MOVEMENT 80年代の武装少女たち~その戦いの記録~」『日本不良映画年代記』洋泉社〈洋泉社MOOK〉、2016年、135頁。 ISBN 9784800309006 
  25. ^ a b c 「邦画封切情報」『シティロード』1988年9月号、エコー企画、39頁。 
  26. ^ 「邦画封切情報」『シティロード』1988年9月号、エコー企画、39頁。 
  27. ^ a b c d 高岩淡(東映専務取締役)・鈴木常承(東映・常務取締役営業部長)・小野田啓 (東映・宣伝部長、役員待遇)、聞き手・北浦馨「特集1本誌・特別インタビュー 『東映2大超特作を柱に大攻勢秋『華の乱』新春『激突』 対談:1988年9月20日東映本社」『映画時報』1988年8、9月号、映画時報社、6–7頁。 
  28. ^ 「邦画封切情報 菩提樹ーリンデンバウムー(東映)」『シティロード』1988年9月号、エコー企画、41頁。 

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