生後6ヶ月前後の離乳期の元気な赤ちゃんが急にぐったりし,やがては顔色が蒼白(血の気が引く状態)になり,便に粘液の混じった血液を認めるようになる病気です. この病気は大急ぎで診断し,治療を始めなければなりません. 典型的な腸重積症は小腸の終りの腸である回腸が大腸に入り込むために生じます.回腸が大腸に入る(これを腸重積といいます)原因としては腸に分布しているリンパ組織が腫れて大きくなり,この部分から大腸に入っていくと考えられておりますが,時には小腸に ポリープ があったり 膵臓組織が小腸に迷い込んでいたり , メッケル憩室 といって生まれつき腸管の一部が袋状に残った場合にはこれらの部分から腸重積がおきます.リンパ組織が大きくなる原因としては風邪などのウイルス感染が指摘されております.そのために約1/4の腸重積症の赤ちゃんに感冒症状を認めます. この病気は離乳期前後に多いと最初に記載しましたが,多くは1歳くらいまでのあかちゃんがかかる病気ですが、まれにはそれ以上の幼児や生まれて間もないあかちゃんにも見られることがあります.お母さんの胎内で胎児がこの病気になりますと,この赤ちゃんは小腸の一部がつまった病気—先天性腸閉鎖症—を持って生まれてきます. 男の子の方が女の子より2倍くらい多く発生するといわれております. 腸重積がおきますと,腸管から返る血液の流れが障害され腸管にある細い血管が破れて血液が腸の中に出ますので便に血液が混じるのです.腸重積がおき時間が経過しますと,腸内容の移動が障害され,吐くなどの腸の閉塞症状が現れますし,また腸重積を起こした腸は次第に血液が流れなくなるために組織が死んでいきます( 壊死 ).このような腸の状態になる前に病気を診断し,治療を急がなければならないわけです. 診断は外からお腹の中にソーセージのようなかたまりを触ることや, 超音波検査 で腸重積を起こした部分を映し出したりまたレントゲン検査で診断出来ますので,異常が疑われた場合には一刻も早く受診されることをお勧めします. この病気にかかったと思われる時間から24時間以内に来院された赤ちゃんの8割は造影剤(レントゲンに写る物質)を肛門から注入し,圧を加えることにより腸重積を元の状態(これを整復といいます)にすることが出来ます.また造影剤を用いる代わりに空気を肛門から注入し整復を試みている施設もあります.しかし,2割前後の赤ちゃんは整復ができないため手術により腸重積を整復することになりますが,腸の組織に血液が流れない状態が長く続いた時には腸を切り取らなければなりません.ご両親はお子さんが手術を受けるために早い決断が必要になります. 腸重積の整復後にも絶食と入院を勧められますが,これは腸重積を起こした腸管の病気の回復と再発の予防のためです.再発は約10%位に見られますので,病気が起きた時の赤ちゃんの症状を覚えておきましょう. |