脱ユビキチン化酵素の役割
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/30 15:45 UTC 版)
「脱ユビキチン化酵素」の記事における「脱ユビキチン化酵素の役割」の解説
DUBはユビキチン経路でいくつかの役割を果たす。DUBの最もよく特徴づけられている機能は、タンパク質からのモノユビキチンとポリユビキチン鎖の除去である。ユビキチン化は翻訳後修飾(タンパク質の合成後に付加されたもの)であり、基質タンパク質のリジン残基に1つのユビキチンまたはユビキチンの鎖が付加される。ユビキチンは、ユビキチン活性化酵素(E1)、ユビキチン結合酵素(E2)、ユビキチンリガーゼ(E3)からなるユビキチン化装置によってタンパク質に付加され、最終的にはリジン残基にイソペプチド結合で付加されたユビキチンとなる。ユビキチン化は多くの方法でタンパク質に影響を与え、プロテアソームとリソソームを介したタンパク質の分解を調節し、タンパク質の細胞内局在を調整し、タンパク質を活性化したり不活性化したりし、タンパク質間相互作用を調節する。DUBはユビキチン化修飾を除去することでこれらの作用に対抗する役割を果たし、タンパク質の運命を逆転させる。さらに、あまり理解は進んでいないものの、DUBはSUMOやNEDD8(英語版)などのユビキチン様タンパク質の除去にも関与しており、一部のDUBはこれらのタンパク質と基質タンパク質の間のイソペプチド結合を切断する。 DUBは、不活性型として発現するユビキチンをタンパク質分解によって活性化する。哺乳類ではユビキチンは、UBA52(英語版)、RPS27A(英語版)、UBB(英語版)、UBC(英語版)の4つの異なる遺伝子にコードされている。酵母など他の真核生物でも同様の遺伝子セットが発見されている。UBA52、RPS27A遺伝子はリボソームタンパク質に融合した形でユビキチンを産生し、UBB、UBC遺伝子はポリユビキチン(C末端とN末端で連結されたユビキチンの鎖)を産生する。DUBはこれらのタンパク質からユビキチンを切断し、活性のあるモノユビキチンを産生する。 DUBは、意図せずC末端テールが細胞内の求核性低分子と結合したモノユビキチンタンパク質の切断も行う。こうしたC末端テールで結合したユビキチン-アミドやユビキチン-チオエステルは標準的なE1-E2-E3カスケードによるユビキチン化反応でも形成される場合があり、グルタチオンやポリアミンはユビキチンとこれらの酵素の間のチオエステル結合を攻撃する可能性がある。ユビキチンC末端ヒドロラーゼ(UCH)は、こうした意図しない結合を広い特異性で加水分解するDUBの例である。 またDUBは、遊離ポリユビキチン鎖を切断してモノユビキチンを産生する。こうしたポリユビキチン鎖は、基質タンパク質がない場合でもE1-E2-E3装置によって形成される場合がある。遊離ポリユビキチン鎖の他の発生源は、ユビキチン化基質の切断産物である。DUBがタンパク質に付加されたポリユビキチン鎖をその基部で切断した場合にはポリユビキチン鎖が遊離し、DUBによるモノユビキチンへの再生が必要となる。
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