肝癌と肥満
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/30 10:02 UTC 版)
肝臓のILC1は、IFN-γ、TNF-αの産生により慢性B型肝炎の病態に寄与している。(総)胆管を裏打ちする上皮の障害は、慢性肝炎に伴って頻繁に観察され、これらの胆管の増殖亢進は肝癌と関連している。この増殖亢進は、IL-33がILC2細胞を産生誘導する事で生成されるIL-13が引き金となっている旨を示唆する証拠がある。また、ILC2は肝線維化の進行を促進し、ひいては肝がんの発生を促進する事も明らかになっている。 特定の食物性の栄養素の利用可能性は、脂肪組織に貯蔵されるエネルギーを変化させる事によってILCの免疫恒常性に影響を与え得る。脂肪組織は代謝の恒常性を維持しており、現在では完全に免疫担当組織と考えられている。栄養失調と暴飲暴食(英語版)は、食事の栄養素の変化を介してILCの反応を調節不全にし、脂肪組織に蓄えられるエネルギーに直接影響を与える。肥満は、消化器微生物叢の変化、脂肪組織から肝臓への遊離脂肪酸の流出の増加、腸管透過性の亢進と関連している。消化管と肝臓は解剖学的に近接している為、細菌の代謝物が門脈を通って運ばれると、ILC1を含む自然免疫細胞に作用して炎症を誘発し、肝臓の炎症状態の発生に重要な役割を果たす。その為、肥満に伴う炎症は、インスリン抵抗性や代謝異常の形成により、肝疾患の進行に影響を及ぼす可能性がある。脂肪組織の炎症を制御するILC1は、肝臓疾患やメタボリック症候群の治療対象として期待されている。 また、ILC2は、ヒトやマウスの白色脂肪組織に存在し、肥満の原因となる事が確認されている。脂肪組織の恒常性が乱されると、ILC2の反応が低下し、エネルギー恒常性(英語版)におけるILC2の重要な役割が阻害される為、エネルギー消費量が減少し、脂肪が増加する点が肥満の特徴である。
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