聖母に別れを告げるキリスト (エル・グレコ)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/09/16 01:20 UTC 版)
スペイン語: Cristo despidiéndose de su madre 英語: Christ Taking Leave of His Mother |
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作者 | エル・グレコ |
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製作年 | 1595年 |
種類 | キャンバス、油彩 |
寸法 | 109 cm × 99 cm (43 in × 39 in) |
所蔵 | 個人蔵 |
『聖母に別れを告げるキリスト』(せいぼにわかれをつげるキリスト、西: Cristo despidiéndose de su madre、英: Christ Taking Leave of His Mother) は、ギリシャ・クレタ島出身で主にマニエリスム期のスペインで活動した画家エル・グレコが1595年にキャンバス上に油彩で制作した絵画で[1]、画家がこの主題を扱った最初の作品である[2]。現在、個人蔵となっている。
作品

「聖母に別れを告げるキリスト」は絵画より版画に頻繁に現れる主題で、福音書ではなく、中世後期の宗教文学や、当時人気のあった「奇跡劇」のような宗教劇に由来している[3]。十字架上で死ぬためにエルサレムに戻る前、イエス・キリストはべタニアの村で聖母マリアに別れを告げた。聖母や弟子たちは、彼に行かないように懇願する。しかし、キリストは、聖ペテロと聖ヨハネにエルサレムで過越の食卓 (最後の晩餐となる) を準備するように命ずる[3]。この主題は16世紀の早い時期に北方ルネサンス美術において多く見られたもので、ドイツの画家アルブレヒト・アルトドルファーの『聖母に別れを告げるキリスト』はその1例である[3]。
本作の画面では、イエスが聖母を祝福しつつ、別れを告げている。これはエルサレム入城の前のことであり、イエスはその後、受難と死を迎えることを知っている[4]。イエスの左手と聖母の右手が組み合わされている一方、彼らの指は別の方向を向いている。イエスと聖母の顔は、両者の間の純粋な愛と受容を表わす[5]。指の描写、とりわけ引き伸ばされた手の描写には、ミケランジェロに一定の感化を受けたことが見て取れる[1]。本作にはまた、エル・グレコがヴェネツィア滞在時に受けた画業形成の跡が示されている[2]。
なお、本作は、モンフォルテ・デ・レモスの枢機卿学院 (Colegio del Cardenal) にある『瞑想する聖フランチェスコと兄弟分レオ』などのほかのエル・グレコの絵画に比べて不完全であると見なされることもある[6]。
脚注
- ^ a b “Christ Taking Leave of his Mother | artehistoria.com”. www.artehistoria.com. 2021年5月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年5月6日閲覧。
- ^ a b “PRESS RELEASE: Christie's Classic Week 4–13 July” (英語). www.christies.com. 2021年5月6日閲覧。
- ^ a b c エリカ・ラングミュア、2004年、102-103頁。
- ^ John Oliver Hand, Catherine A. Metzger, Ron Spronk: Prayers and Portraits: Unfolding the Netherlandish Diptych, p.66, 2006, Yale University Press, ISBN 0-300-12155-5
- ^ “In Chicago, shattered glass but also a vision of heaven”. www.catholicworldreport.com (2020年9月9日). 2020年9月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年5月6日閲覧。
- ^ “Three highlights from London's Old Master auctions” (英語). www.theartnewspaper.com. 2021年5月6日閲覧。
参考文献
- エリカ・ラングミュア『ナショナル・ギャラリー・コンパニオン・ガイド』高橋裕子(訳)、National Gallery Company Limited、2004年。ISBN 1-85709-403-4
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