縮瞳を起こす病態
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/12/10 15:30 UTC 版)
片側の縮瞳では、交感神経障害によるホルネル症候群を第一に考える。ホルネル症候群は特有の症状を呈するので診断は容易である。両側性の縮瞳では高齢者、アーガイル・ロバートソン瞳孔、副交感神経刺激作用を有する麻薬、有機リン、フェノチアジンなどの中毒でみられる。橋出血では針先瞳孔(pin-point pupil)と呼ばれる両眼の著しい縮瞳が起きる。これは交感神経の一次ニューロン下行路の障害による。 ホルネル症候群 ホルネル症候群の症状は縮瞳(瞳孔散大筋麻痺)、軽度の眼瞼下垂(瞼板筋麻痺)および瞼裂狭小(下眼瞼の挙上も生じる)である。眼窩内平滑筋が発達した家兎ではその麻痺による眼球陥凹も生じるが、未発達のヒトでは眼球陥凹は起こらない。眼交感神経は高次中枢である視床下部より発し、脳幹を下降し頚椎C1、C2、胸椎T1、T2の毛様脊髄中枢でシナプスをかえる。下・中部交感神経節を通過、交感神経幹を上行し上頚部交感神経節へ入る。ここでシナプスを形成し節後神経になり眼交感神経として内頸動脈とともに頭蓋内に入り、瞳孔散大筋瞼板筋にいたる。病変部位の診断法として上頚部神経節を境にして節前障害と節後線維を鑑別する。ホルネル症候群を起こす病変は中枢性障害(視床下部、脳幹、脊髄)としてはワレンベルグ症候群、脊髄疾患、腫瘍、多発性硬化症、血管障害が知られている。節前性(毛様脊髄神経から上頚部神経節)としては胸部腫瘍、すなわちパンコースト症候群、縦隔腫瘍などが知られている。節後性(上頚部神経節から眼球)では頸部の腫瘍、血管障害、外傷などが知られている。鑑別には顔面の発汗障害と薬物点眼試験が有用である。瞳孔支配と顔面の汗腺支配の交感神経は節前では併走しているが、節後では瞳孔支配は内頸動脈、汗腺支配では外頸動脈とともに走行する。従って、顔面の発汗障害があれば節前障害である。薬物点眼試験では、正常眼では反応しない、0.1%濃度のアドレナリン点眼を行う。節後障害では脱神経支配による過敏反応が生じており、散瞳がおきる。逆に、神経終末部に作用して交感神経作用を発揮する1%コカインの点眼では、節前障害では正常の散瞳が起きるが、神経終末部が破壊されている節後障害では散瞳はみられない。 アーガイル・ロバートソン瞳孔 縮瞳、対光反射消失、輻輳調節反射正常が基本症候である。中脳上丘視蓋前域で対光反射の求心路の障害で起こるので、通常両側性である。神経梅毒の徴候として有名であるが、多発性硬化症など他疾患でも起きる。
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