素朴実在論の乗り越えや改良
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「素朴実在論」の記事における「素朴実在論の乗り越えや改良」の解説
この素朴実在論とは異なった考え方の一つが、プラトンが提示したイデアという考え方である。これは、本物の実在というのは霊界にあるイデアであり、我々がふだん肉眼で見たと信じているものはイデアの摸造にすぎない、我々は以前イデアを見て過ごしていたがこちらの世界に来る時にその記憶を失ってしまった、だからそのイデアを《想起(アナムネーシス)》して見ることが、実在を真に認識することになるのだ、とするものである。 「本当の実在はあちら側の世界にあり、こちらの世界はみかけにすぎず摸造だ 」とするこのプラトニズムの世界観は、一方では現在のスピリチュアリズムの考えともつながっている。 またその一方で、このプラトニズムが結果として数理的に自然を把握しようとする西洋の科学をもたらすことになった、と指摘する科学史家もいる。(カール・ポパーが提示した「数理的な《世界3》が実在し、我々の世界はその《世界3》が投影されたものだ」という考え方も、このプラトニズムの系譜に属すると指摘されてもいる。なおポパーの《世界3》という考え方はロジャー・ペンローズも支持している。) また西欧哲学においては、我々が感じている内容を現象と呼び、それについて考察してきた。ヒュームは懐疑的にとらえ、我々が感覚器でとらえていることは客観性とは繋がり得ないと見なした。カントは、現象は《物自体》と対比され、現象というのは物自体と主観との共同作業によって構成されるものだとし、人は現象が構成される以前の《物自体》を認識することはできない、とした。フッサールは現象学を創始した。 素朴実在論を改変・改良した考え方としては他に、「世界は現に存在しているが、しかしその世界は必ずしもそのすべての点において私たちに見えているとおりのものとは限らない」とする批判的実在論がある。 現代の科学では「我々は、世界が存在すると見なし、しかもその世界の構造が部分的には認識可能であることを想定してはいるが、世界について我々が行うあらゆる言明は仮説的な性格を持つ」というCampbellの「仮説的実在論」がある。
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