素朴集合論と公理的集合論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/14 07:53 UTC 版)
集合論の初期の段階では、集合は「普通の意味での」ものの集まりとして導入され考察された。この見方を現在では素朴集合論(そぼくしゅうごうろん)という。これは集合を理解する上で最もわかりやすい考え方であるが、「普通の意味での」ものの集まりを以下の内包公理で定式化すると、パラドックスが現れてしまう。 任意の性質 P ( x ) {\displaystyle P(x)} に対して、 P ( x ) {\displaystyle P(x)} を満たす元 x {\displaystyle x} の集合 { x | P ( x ) } {\displaystyle \{x|P(x)\}} が存在する パラドックスの有名なものとしては、以下のものがあげられる。 カントールのパラドックス 全ての集合を含む集合(たとえばX = {a | a = a})を考えると、そのべき集合はカントールの定理によってより大きな濃度を持つはずだが、一方もとの集合に含まれるのだから、濃度は大きくないはずである。 ブラリ=フォルティのパラドックス 全ての順序数からなる集合 O はそれ自体が順序数であり、O ∈ O から O < O となって矛盾 ラッセルのパラドックス X = {a | a ∉ a} という集合を考える。それに対してX ∈ X であると仮定してもあるいは X ∉ X であると仮定してもいずれも矛盾を生じる。 カリーのパラドックス X = {a | ( a ∈ X ) → Y} という集合を考える。いかなるYも真となるため、結果として矛盾を生じる。 リシャールのパラドックス ベリーのパラドックス ただし、ツェルメロの公理的集合論では内包公理は以下の分出公理として弱められた形で定式化されており、上記のパラドックスは現れない。 任意の性質 P ( x ) {\displaystyle P(x)} と集合 A {\displaystyle A} に対して、 P ( x ) {\displaystyle P(x)} を満たす A {\displaystyle A} の元 x {\displaystyle x} の集合 { x ∈ A | P ( x ) } {\displaystyle \{x\in A|P(x)\}} が存在する 実際には数学を行う上では、適当な集合Aをあらかじめ設定した上で、分出公理を用いれば十分なことが多い。したがって、集合論の使用による、パラドックスの発生を意識する必要はない。
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