素材としての鯨ひげ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/05/06 09:55 UTC 版)
加工しやすい程度の硬さで、引っ張り強度があり、軽く、弾力性があるなどの優れた性質があるため、エンバ板とも呼ばれ、古くから様々な製品の素材に用いられてきた。古い例としては、正倉院に鯨ひげ製の如意が宝物として収められている。特にセミクジラ科のものは、長くて非常に柔軟かつ弾力があることから重宝され、結果としてセミクジラ科の乱獲の一因ともなった。その後、弾力のある金属線やプラスチックが普及したため、現在では工芸的な用途を除いては需要は殆どない。 釣竿 - 日本では、弾力性を生かして釣竿の先端部分に用いられる。現在でも一部で使用されている。 衣服 - 整形用の骨に用いる。西洋ではコルセットやクリノリンなどの女性用下着やドレスの腰部、日本では裃の肩など。 傘 - 西洋では傘の骨に用いた。フランス語で「傘の骨」を(os de )baleineというが「鯨」(の「骨」)の意味。 扇子 - 日本では、扇子の要として用いていた。 呉服尺 - 日本では着物の仕立て専用のものさしの材料に用いた。鯨尺とも呼ばれ、長さの単位としてその名が残っている。鯨ひげから作られたからとされるが定かではない。鯨尺1尺は曲尺 (かねじゃく) の1尺2寸5分に相当し、37.88cm。 ぜんまいばね - 江戸時代の日本でぜんまいの材料とされた。からくり人形などで使用された。 文楽人形 - 操作索に用いる。 ヴァイオリンの弓 - スティックの巻き線に用いる。現在はイミテーション(模造品)もある。 その他 - くつべら、兜の装飾など。 なお、特殊な用途として、日本では食用にも用いられた例がある。若いセミクジラのものを食用にしたほか、太平洋戦争中に代用醤油の原料として用いられた。
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