管理会計の発展
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/05 23:08 UTC 版)
1930年代に提唱された前述の直接原価計算は、財務会計の目的に資するかどうか激しい論争が行われたが、管理会計において有用であることは定説となった。そして、1962年には標準原価計算と直接原価計算を結合した標準直接原価計算が登場するなどの新たな展開を見せた。他方、同じく1960年代には、管理会計の分野において、キャッシュフロー情報の活用が進展した。これは設備投資の活発化に伴い、プロジェクト別の採算計算が重要となったためである。プロジェクト別採算計算では、発生主義会計に伴い算定される減価償却費は、投資意思決定とは関係のない埋没原価となってしまう。そのため、設備投資意思決定においては、回収期間法やDCF法などによるキャッシュフロー情報の活用が行われたのである。 一方、1980年代のアメリカでは、赤字製品の切り捨てなどのリストラ目的で、活動基準原価計算の導入が図られた。この背景には大量生産から多品種少量生産への転換という工場の実態に対応する必要があった。伝統的な原価計算が大量生産に適した製造間接費の配賦基準を用いていたため、多品種少量生産では適切に製造間接費を製品別に配賦できなかったのである。ロバート・S・キャプラン(英語版)らはこの問題を解決するため、活動基準原価計算(ABC)を提唱し、これは製品戦略に資するものであるとされた。活動基準原価計算は全部原価計算の流れを汲むものであり、著名な原価計算学者のチャールズ・T・ホーングレンは活動基準原価計算に反対し、キャプランと激しい論争を繰り広げたが、結局、ホーングレンも自説を改めて活動基準原価計算を支持した。 1990年代になると、M&Aの活発化にともない、企業価値評価で活用されるキャッシュフロー情報が管理会計においてもますます重要となった。また、活動基準原価計算は、プロセス改善による原価低減を目的とした活動基準原価管理(ABM)に発展している。また、キャプランらによって1992年には新たな管理会計ツールとしてバランスト・スコアカードが提唱され、これは戦略マネジメントシステムとして広がっていくことになった。
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