眼サルコイドーシス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/16 10:24 UTC 版)
「サルコイドーシス」の記事における「眼サルコイドーシス」の解説
サルコイドーシスの約50%に眼病変が生ずるとされており、その多くはぶどう膜炎と呼ばれる眼内炎症疾患である。ぶどう膜炎の原因疾患は、かつてはベーチェット病が最も多かったものの、近年はサルコイドーシスが最も多い。眼サルコイドーシスでは非特異的な眼内炎症病変の他に、特徴的な眼病変が混在している。サルコイドーシスの診断基準では、前部ぶどう膜炎、隅角結節、周辺部虹彩前癒着、硝子体混濁、網膜周囲血管炎、網脈絡膜滲出斑および結節、網脈絡膜広範囲萎縮病変などが特徴的な所見とされている。サルコイドーシスでは長期にわたる慢性の眼内炎症によって、白内障、緑内障、嚢胞様黄斑浮腫、黄斑上膜などの視力の低下につながる重篤な合併症を生ずる場合がある。白内障は、サルコイドーシスの約半数に認められる。緑内障は、約20~30%に認められる。眼圧の上昇の原因としては、隅角結節による房水流出障害、テント上PASによる房水流出障害、ステロイド系抗炎症薬の副作用などが挙げられる。なお、隅角結節による眼圧の上昇には、ステロイド系抗炎症薬が有効であるものの、その副作用の有無について注意を払う必要がある。 前部ぶどう膜炎 前部ぶどう膜炎とは、虹彩あるいは毛様体などの前眼部に発生した炎症を言う。前房水中に炎症細胞浸潤が認められれば、前部ぶどう膜炎と診断される。 ただし、これはサルコイドーシスに限らず、ベーチェット病、vogt-小柳-原田病など、殆ど全てのぶどう膜炎で見られる非特異的な眼病変である。 肉芽腫性前部ぶどう膜炎 豚脂様角膜後面沈着物や虹彩結節が認められる前部ぶどう膜炎を肉芽腫性前部ぶどう膜と言い、サルコイドーシスに特異的と考えられている。ベーチェット病など非肉芽腫性血管炎では、角膜後面沈着物は炎症細胞びまん性に沈着する。これに対して、サルコイドーシスの場合は炎症細胞が集簇し、大型の角膜後面沈着物を形成する。これを豚脂様角膜後面沈着物と言う。 虹彩結節 虹彩結節は虹彩に生じる肉芽腫であり、瞳孔縁のKoeppe結節や虹彩実質のBusacca結節が知られ、特異度の高い所見とされている。 隅角結節、テント上虹彩前癒着(テント上PAS) 虹彩と角膜が合わさる部分である前房隅角を、隅角鏡で観察する。線維柱帯に、隅角結節(肉芽腫)やテント上虹彩前癒着(肉芽腫の瘢痕)が認められる場合がある。 硝子体病変 ぶどう膜炎では炎症細胞が硝子体に浸潤して、硝子体混濁を起こす。非肉芽腫性ぶどう膜炎ではびまん性の硝子体混濁が起こるのに対して、サルコイドーシスでは硝子体中に類上皮性肉芽腫を形成した結果として数珠状の硝子体混濁が起こる。 脈絡膜炎 ぶどう膜炎では炎症細胞が網膜や脈絡膜に滲出した結果、眼底の白斑あるいは滲出斑と呼ばれる病変が出現する。白斑、滲出斑、出血が黄斑部に及ぶと、高度の視力低下の原因となる。ただし、これはベーチェット病、結核、交感性眼炎、サイトメガロ網膜症などでも認められる非特異的病変である。 網膜静脈周囲炎 ぶどう膜炎の網膜血管炎は、幾つかのパターンが知られている。ヘルペスウイルスによる急性網膜壊死では動脈炎が主体、サルコイドーシスや結核では静脈炎が主体、ベーチェット病では動脈、静脈が同様に広範囲に障害され、vogt-小柳-原田病では網膜血管炎は認められない。サルコイドーシスの静脈周囲炎は、網膜静脈に沿って結節状の白色浸潤が所々に生じる。この竹の節状の網膜静脈周囲炎はサルコイドーシスに特異的と考えられている。
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