真核生物型
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/16 00:33 UTC 版)
多くの真核生物では、現在コンデンシン I とコンデンシン II と呼ばれる2つの複合体の存在が知られており、それぞれ5つのサブユニットから構成される(図2)。そのコアとなるサブユニット(SMC2とSMC4)は、SMCタンパク質と総称されるATPアーゼのファミリーに属する。コンデンシン I とコンデンシン II は、この2つの SMC サブユニットを共有する一方、それぞれに固有なセットの制御サブユニット(ひとつのkleisinサブユニットと2つのHEATリピートサブユニット)を持つ。これらの制御サブユニットは、併せてnon-SMC サブユニットと呼ばれることもある。いずれのコンデンシンも、総分子量650-700 kDa程度の巨大なタンパク質複合体である。 複合体サブユニット分類脊椎動物ショウジョウバエ線虫出芽酵母分裂酵母シロイヌナズナ原始紅藻テトラヒメナコンデンシン I および IISMC2 SMC ATPase CAP-E/SMC2 SMC2 MIX-1 Smc2 Cut14 CAP-E1 & -E2 SMC2 Smc2 SMC4 SMC ATPase CAP-C/SMC4 SMC4/Gluon SMC-4 Smc4 Cut3 CAP-C SMC4 Smc4 コンデンシン ICAP-D2 HEAT CAP-D2 CAP-D2 DPY-28 Ycs4 Cnd1 CAB72176 CAP-D2 Cpd1 & 2 CAP-G HEAT CAP-G CAP-G CAPG-1 Ycs5/Ycg1 Cnd3 BAB08309 CAP-G Cpg1 CAP-H kleisin CAP-H CAP-H/Barren DPY-26 Brn1 Cnd2 AAC25941 CAP-H Cph1,2,3,4 & 5 コンデンシン IICAP-D3 HEAT CAP-D3 CAP-D3 HCP-6 - - At4g15890.1 CAP-D3 - CAP-G2 HEAT CAP-G2 - CAP-G2 - - CAP-G2/HEB1 CAP-G2 - CAP-H2 kleisin CAP-H2 CAP-H2 KLE-2 - - CAP-H2/HEB2 CAP-H2 - コンデンシン I DCSMC4 variant SMC ATPase - - DPY-27 - - - - - コンデンシンのコアサブユニット(SMC2とSMC4)は、これまで調べられた全ての真核生物に保存されている。コンデンシン I に固有の制御サブユニットも同様であるが、コンデンシン II に固有のサブユニットを保持しているかどうかは種によって大きく異なる。 例えば、ショウジョウバエ (Drosophila melanogaster) のゲノムには、コンデンシン II の制御サブユニット CAP-G2 の遺伝子が欠けている。また、昆虫では、CAP-G2に限らずCAP-D3やCAP-H2の遺伝子を失っている種が頻繁にみられる。コンデンシン II に固有のサブユニットは進化の過程で大きな淘汰圧に晒されているらしい。 線虫 (Caenorhabditis elegans) はコンデンシン I と II を有するが、中期染色体における両者の局在パターンが他の生物とは大きく異なっている。これはこの生物がホロセントリック(染色体腕部全長に沿って多数のセントロメアが散在する)という特殊な染色体構造をもつためと考えられている。また線虫は、コンデンシン I に類似した第3の複合体(コンデンシン I DC:5つのサブユニットのうちSMC-4がDPY-27と置き換わっている)を有し、これは遺伝子量補償 (dosage compensation [DC]) の主要な制御因子として働いている。 菌類(出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeや分裂酵母Schizosaccharomyces pombe)のように、コンデンシン II に固有のサブユニットを全て失っている種も存在する。しかし、単細胞性の原始紅藻 (Cyanidioschyzon merolae) では、そのゲノムは酵母とほぼ同一のコンパクトサイズであるにもかかわらず、コンデンシン I と II を共にもっている。すなわち、ゲノムの大きさとコンデンシン II の保持との間に強い相関関係はない。 繊毛虫テトラヒメナ (Tetrahymena thermophila) は、コンデンシン I のみを有する。しかし、二つの制御サブユニット(CAP-D2とCAP-H)にはそれぞれ複数のパラログが存在し、その中には大核(遺伝子発現機能を有する)と小核(生殖機能を有する)に特異的に局在するものがある。すなわち、この種では、異なる制御サブユニットをもち異なる細胞内局在を示す複数のコンデンシン I 複合体が存在する。これは、他の生物種では観察されないユニークな特徴である。
※この「真核生物型」の解説は、「コンデンシン」の解説の一部です。
「真核生物型」を含む「コンデンシン」の記事については、「コンデンシン」の概要を参照ください。
- 真核生物型のページへのリンク