真核生物の走化性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/09 14:34 UTC 版)
真核生物の化学走性機構は細菌のそれとはまったく異なっているが、化学物質の濃度勾配を感知することが決定的に重要である点は同様である。原核生物は大きさに制限があるため、濃度勾配をうまく検知することができない。そのためつねに泳ぎ回って(直線的泳ぎとタンブルの繰り返しによって)自己の環境をスキャン・評価している。原核生物とは対照的に真核生物は濃度勾配検知を行えるだけの十分な大きさがあり、化学受容体が動的・局在性に分布している。化学誘引物質や忌避物質によってこの受容体が誘導されることで、走化性物質に向かって移動したりそれから逃げたりすることになる。 受容体や細胞内シグナル伝達経路、効果器メカニズムの進化の違いが、すべて多様な真核生物の化学走性機構にかかわっている。真核単細胞生物ではアメーバ運動と繊毛(あるいは真核生物鞭毛)が主な効果器である(たとえばアメーバやテトラヒメナ)。より進化した脊椎動物由来の真核細胞の中にも、免疫細胞のように必要とされる場所へ移動するものがある。免疫担当細胞(顆粒球、単球、リンパ球)以外にも、従来は組織中に固定されていると考えられていた多くの細胞が特定の生理的(正常な)条件下(肥満細胞、線維芽細胞、血管内皮細胞)や病理学的(病的な)条件下(転移など)で移動することがわかっている。走化性は胚発生の初期段階においても胚葉の発達がシグナル分子の濃度勾配に誘導されて起きるという点で重要な意味を持っている。
※この「真核生物の走化性」の解説は、「走化性」の解説の一部です。
「真核生物の走化性」を含む「走化性」の記事については、「走化性」の概要を参照ください。
- 真核生物の走化性のページへのリンク