相対原子質量との関係
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/10 07:54 UTC 版)
電子の相対原子質量は、その他全ての相対原子質量の計算の一部となる。慣習により、相対原子質量は中性原子に付けられるが、質量分析計やペニング・トラップによる測定は陽イオンに対して行われるため、直接的にに測定される陽イオンの相対原子質量から、中性原子の相対原子質量は計算される。中性原子の質量は陽イオンと電子の質量の合計から、電子の結合エネルギー Eb と等価な質量を差し引いたものである。原子番号 Z の核種 X について、全ての電子が電離して完全にイオン化した最も単純な場合も取り上げると A r ( X ) = A r ( X Z + ) + Z A r ( e ) − E b ( X ) m u c 2 {\displaystyle A_{\text{r}}(X)=A_{\text{r}}(X^{Z+})+ZA_{\text{r}}({\text{e}})-{\frac {E_{\text{b}}(X)}{m_{\text{u}}c^{2}}}} である。 相対原子質量は質量の比として測定されるため、補正は両方のイオンについて行われなければならない。幸運なことに、水素1と酸素16について以下で示すように、補正における不確かさは無視できる。 核種1H16OXZ+イオンの相対原子質量1.00727646677(10) 15.99052817445(18) Z個の電子の相対原子質量0.00054857990943(23) 0.0043886392754(18) 結合エネルギーに対する補正−0.0000000145985 −0.0000021941559 中性原子の相対原子質量1.00782503207(10) 15.99491461957(18) この原理はFarnhamらによる電子の相対原子質量の決定によって示すことができる。この実験は電子とペニング・トラップ中の 12C6+ によって放出されるサイクロトロン放射(英語版)の周波数の測定を含む。2つの周波数の比は2つの粒子の質量の反比の6倍に等しい(粒子が重いほどサイクロトロン放射の周波数は低くなる。粒子の電荷が大きいほど周波数は高くなる)。 ν c ( 12 C 6 + ) ν c ( e ) = 6 A r ( e ) A r ( 12 C 6 + ) = 0.000 274 365 185 89 ( 58 ) {\displaystyle {\frac {\nu _{\text{c}}({}^{12}{\text{C}}^{6+})}{\nu _{\text{c}}({\text{e}})}}={\frac {6A_{\text{r}}({\text{e}})}{A_{\text{r}}({}^{12}{\text{C}}^{6+})}}=0.000~274~365~185~89(58)} 12C6+ イオンの相対原子質量は極めて12に近いため、周波数の比は Ar(e) の第一近似5.4863037178×10−4を計算するために使うことができる。この近似値は次に Ar(12C6+) の第一近似を計算するために使われ、(炭素の6つのイオン化エネルギーの和から)Eb(12C)/muc2 が1.1058674×10−6、Ar(12C6+) ≈ 11.9967087236367 であることが分かる。この値は次に Ar(e) の新たな近似を計算するために使われ、この工程は値が変動しなくなるまで繰り返される(測定の相対的不確かさ 2.1×10−9 を考慮する)。収束は4サイクル目で起こり、Ar(e) = 5.485799111(12)×10−4 が得られる。
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