用益権独自の登記事項
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/02 09:38 UTC 版)
「登記事項 (不動産登記)」の記事における「用益権独自の登記事項」の解説
用益権とは、用益物権のほか、賃借権も含まれる。賃借権は債権であるが、不動産賃借権は民法により登記が認められている。用益権の登記の登記事項には担保権の場合とは違って、用益権に共通の登記事項が一つの条文にまとまって記されてはいない。しかし、多くの場合、使用収益の対価と存続期間が登記事項となっている。第一に、使用収益の対価が登記事項であるかどうかが問題である。この点、地役権を除く用益権は対価を登記することができる。また、賃借権の賃料と永小作権の小作料は、その権利を構成する不可欠の要素であることから、絶対的登記事項である。このことは賃借権の場合、民法が保護するのは不動産の賃借であり使用貸借では無い事が原因であり、永小作権の場合は、元来小作料を収める代わりに小作人の小作地に対する権利を物権として保護しようという考えの下に考案された権利である事に由来する。これに対し、地上権の場合、地代は必要不可欠な要素とはされておらず、相対的登記事項である。第二に譲渡・転貸についての特約が登記事項となるかが問題となるが、物権は元来、譲渡性を持つため、譲渡・転貸に制限をつける事はできず、それを禁止・制限する特約は、債権的効力をもつのみである。それに対して、債権、特に賃借権は譲渡性は、本質ではない。そのことから、用益物権の登記には「譲渡・転貸禁止の特約」は登記事項ではなく、逆に賃借権は、「譲渡・転貸を許可する特約」は登記事項でな無いことになる。しかし、その原則にも修正が加えられており、永小作権は「譲渡・転貸禁止特約」を登記することができ、賃借権は賃貸人の承諾を得れば賃借権の譲渡・賃借物の転貸ができることから「譲渡・転貸を許す旨」は登記事項とされている。 用益権の登記事項の比較1(○は絶対的記載事項、△は任意的記載事項、×は登記できない事項。)地上権区分地上権永小作権地役権賃借権採石権目的○(地上権設定の目的) × ○(地役権設定の目的) × × 範囲× ○(区分された範囲) × ○ × × 存続期間△ △ △ × △ ○ 設定対価△(地代) △(地代) ○(小作料) × ○(賃料) △(採石料) 支払時期△ △ △ × △ △ 各権利独自の登記事項 ・区分地上権行使のために、 土地の使用に加えられた 制限の定め ・永小作権の譲渡・賃貸の禁止の定め・永小作人の権利又は義務に関する定め ・要益地・民法第281条第1項但書の定め・民法第285条第1項但書の定め・民法第286条の定め ・賃借権の譲渡/転貸を許す旨の定め・敷金・賃貸人が財産処分権限を有しない旨・賃貸人が制限行為能力者である旨 ・採石権の内容 (注意) 各権利独自の登記事項は地役権の「要益地」は絶対的登記事項であるが、それ以外は皆、任意的登記事項である。 不動産登記法59条の規定に関わらず、地役権において、登記「権利者」は登記事項ではない。 地上権が借地権に当たる場合は以下のものも登記事項となる。 借地借家法第22条の定め(定期借地権の定め)前段若しくは第23条第1項の定め(事業用借地権}の定め 地上権設定の目的が借地借家法第23条第1項又は第2項に規定する建物所有である旨 賃借権が借地権に当たる場合は以下のものも登記事項となる 土地の賃借権設定の目的が建物の所有であるときは、その旨 前号に規定する場合において建物が借地借家法第23条第1項又は第2項に規定する建物であるときは、その旨 借地借家法第22条前段、第23条第1項、第38条第1項前段若しくは第39条第1項又は高齢者の居住の安定確保に関する法律第56条の定めがあるときは、その定め
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