理想フェルミ気体
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/19 00:34 UTC 版)
「自由電子」も参照 理想フェルミ気体や自由フェルミ気体は、相互作用のないフェルミ粒子の集まりと仮定する物理モデルである。これは理想気体の量子力学版でフェルミ粒子を考えた場合である。白色矮星における電子や中性子星における中性子の振る舞いは、それらを理想フェルミ気体として扱うことで近似できる。金属や半導体の結晶格子中を動きまわる電子などの周期的な系でも同じようなことができ、擬運動量や結晶運動量(ブロッホ波)と呼ばれるものを用いる。相互作用は定義により無視されるため、理想フェルミ気体の平衡特性やダイナミクスを扱う問題は、1つの独立な粒子の振る舞いの研究に帰着する。これにより比較的扱いやすくなり、たとえば摂動論のような、相互作用を扱うより進んだ理論のための出発点を作ってくれる。 フェルミ粒子の濃度は温度によって変化しないと仮定すると、3次元理想フェルミ気体の全化学ポテンシャル μ {\displaystyle \mu } (フェルミ準位) は、ゾンマーフェルト展開 ( k T ≪ E F {\displaystyle kT\ll E_{\mathrm {F} }} と仮定)により温度ゼロのフェルミエネルギー E F {\displaystyle E_{\mathrm {F} }} と次の関係になる。 μ = E 0 + E F [ 1 − π 2 12 ( k T E F ) 2 − π 4 80 ( k T E F ) 4 + ⋯ ] {\displaystyle \mu =E_{0}+E_{\mathrm {F} }\left[1-{\frac {\pi ^{2}}{12}}\left({\frac {kT}{E_{\mathrm {F} }}}\right)^{2}-{\frac {\pi ^{4}}{80}}\left({\frac {kT}{E_{\mathrm {F} }}}\right)^{4}+\cdots \right]} ここで E 0 {\displaystyle E_{0}} は粒子あたりのポテンシャルエネルギー、 k {\displaystyle k} はボルツマン定数、 T {\displaystyle T} は温度である。 よって内部化学ポテンシャル μ − E 0 {\displaystyle \mu -E_{0}} は、フェルミ温度 E F / k {\displaystyle E_{\mathrm {F} }/k} よりはるかに低い温度でのフェルミエネルギーに近似的に等しくなる。金属におけるフェルミ温度は105ケルビンのオーダーであるため、室温(300 K)ではフェルミエネルギーと内部化学ポテンシャルは本質的に同等となる。
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