状態密度と分布関数
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/12/09 20:03 UTC 版)
状態密度は固体中の運動エネルギー理論において重要な役割を果たす。状態密度と確率密度分布との積は熱平衡状態にある系について、あるエネルギーにおける単位体積あたりの被占有状態数を与える。この値は物質の様々な物性を調べる際に広く用いられている。ここで、確率密度分布と状態密度からどのように物性を得るかの例をいくつか挙げる。 フェルミ・ディラック統計: 図4に示すフェルミ・ディラック分布は、熱平衡状態においてフェルミオンが特定の量子状態を占有する確率を与える。フェルミオンはパウリの排他律に従う粒子であり、例えば電子、陽子、中性子などが挙げられる。この分布関数は次のように書ける。 f F D ( E ) = 1 exp ( E − μ k B T ) + 1 {\displaystyle f_{\mathrm {FD} }(E)={\frac {1}{\exp \left({\frac {E-\mu }{k_{\mathrm {B} }T}}\right)+1}}} μ は化学ポテンシャル(T = 0 の場合フェルミ準位と呼び EF と書く)、kB はボルツマン定数、T は温度である。図4に示す、フェルミ・ディラック分布関数と3次元半導体の状態密度の積がキャリア密度やエネルギーバンドギャップなどの物性についての知識を得るために用いられる。 ボース・アインシュタイン統計: ボース・アインシュタイン分布関数は熱平衡にある系においてボソンがある量子状態を占有する確率を表わす。ボソンはパウリの排他律に従わない粒子で、例えばフォノンや光子が挙げられる。この分布関数は以下のように書ける。 f B E ( E ) = 1 exp ( E − μ k B T ) − 1 {\displaystyle f_{\mathrm {BE} }(E)={\frac {1}{\exp \left({\frac {E-\mu }{k_{B}T}}\right)-1}}} これら二つの分布関数から、内部エネルギー U、粒子数 n、比熱容量 C、熱伝導率 k を計算することができる。 これらの物性値と、密度関数と分布関数との関係式は、状態密度を D(E) ではなく g(E) と書くと、以下のようになる。 U = ∫ E f ( E ) g ( E ) d E {\displaystyle U=\int E\,f(E)\,g(E)\,\mathrm {d} E} n = ∫ f ( E ) g ( E ) d E {\displaystyle n=\int f(E)\,g(E)\,\mathrm {d} E} C = ∂ ∂ T ∫ E f ( E ) g ( E ) d E {\displaystyle C={\frac {\partial }{\partial T}}\int E\,f(E)\,g(E)\,\mathrm {d} E} k = 1 d ∂ ∂ T ∫ E f ( E ) g ( E ) ν ( E ) Λ ( E ) d E {\displaystyle k={\frac {1}{d}}{\frac {\partial }{\partial T}}\int Ef(E)\,g(E)\,\nu (E)\,\Lambda (E)\,\mathrm {d} E} d は次元数、ν は音速、Λ は平均自由行程である。
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