源氏物語における先帝
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源氏物語において、「先帝」なる語は、以下のように、桐壺巻に二個所、賢木巻と若菜上巻に各1個所現れるが、桐壺帝が皇位にある桐壺巻だけではなく朱雀帝が皇位にある賢木巻でも冷泉帝が皇位にある若菜上巻でも「それぞれの時点での今の帝の一つ前の帝」を指すのではなく全て同じ人物を指しているという、固有名詞的な使われ方がされている。源氏物語には、桐壺帝、朱雀帝、冷泉帝、今上帝といった天皇(帝)が登場するが、この他に桐壺帝より前の時点で皇位に就いていた天皇として、「一院」ないし「前の朱雀院」とよばれている人物とこの「先帝」がいたとされる。この一院及び先帝と、桐壺帝以下の作中で皇位に就いている帝たちがいかなる血縁関係にあるのかについては本文中には一切明記されていない。このうち「一院」は、紅葉賀巻の時点で生きており、同巻において、「参座しにとても、あまた所も歩きたまはず、内裏、春宮、一院ばかり、さては、藤壺の三条の宮にぞ参りたまへる。」と、桐壺帝とその長男である朱雀帝がこの一院のために五十の賀を催すなど、桐壺帝と非常に近い関係にあったと見られることから桐壺帝の父であろう(兄である可能性もあるとする説もある。)と考えられている。これに対しこの「先帝」は、桐壺巻の時点ではすでに崩御していたと見られ、またその男子が「帝の后腹の子」という皇位を嗣いでもおかしくない血筋にもかかわらず兵部卿宮や式部卿宮という地位に留まって皇位を継ぎそうな気配が全く無く、同じく后腹の皇女である藤壺が後宮に入った際にも「力のある後ろ盾がいない」ことが問題とされて母后が入内に反対し、藤壺が産んだ皇子である冷泉帝が即位した際には通常母方の係累に繋がる人物が就くべき後ろ盾に「適当な人物がいない」として(実は冷泉帝の実父である)光源氏が就いているなど、この先帝の一族は全く勢力を失った政治的敗者という描かれ方がされている。 なお、源氏物語の作品中においては、過去に実在した帝として桐壺巻において「宇多の帝の御誡めあれば」という形で「宇多天皇」が、また横笛巻において「かれは陽成院の御笛なり。」という形で「陽成天皇」がいたとされる。
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