海律全書
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フランス人のジャン・フェリーチェ・テオドール・オルトラン(Jean Felieché Théodore Ortolan)著の海洋法に関する本。原題は"Règles internationales et diplomatie de la mer"(「海の国際法と外交」)。榎本が高松凌雲に宛てた手紙で"Règles internationales"に「海律」という日本語を当てたことから、『海律全書』または『万国海律全書』と呼ばれるようになった。1845年に初版が発行され、榎本留学中の1864年に第4版が出版されている。上下2冊で構成され、第1冊は総論、序論と平時法規、第2冊は戦争状態を扱っている。日本では、1899年(明治22年)に海軍参謀本部により『海上国際条規』として和訳された。 榎本が所持していた「本」は、化学の師であるハーグ大学フレデリクス教授が蘭訳し自筆筆写したもので、オランダ語で"Diplomatie der Zee"(「海の外交」)という題名が付けられていた。なおオルトランの原書の完全訳ではなく、榎本用に内容を取捨かつ判りやすくしたものであり、後に榎本により原書と対比した書き込みがなされている。 箱館戦争の際に榎本から受け取った黒田清隆は、維新後、本書を海軍省に納めたが、榎本は海軍卿時代に本書を海軍省の書庫で発見し、再び自分の蔵書とした。その後、孫・武英が1916年(大正5年)に宮内省に献上、現在は宮内庁書陵部に保管されている。 なお、榎本の投獄中に福沢諭吉が本書の翻訳を依頼されている。福澤は本書の序文4-5頁だけ翻訳して、これは貴重な本だが講義録であるから講義を聞いた本人でなければ判らないとして、暗に榎本の助命を求めていた。
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