流布本系
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/07 06:24 UTC 版)
アーサー王の散文物語群の一篇『メルラン物語』(=「マーリンの物語」)に登場する怪猫は、名称は明記されないものの、やはりキャスパリーグの伝承に由来するものとみなされている。 『メルラン物語』終盤「ローザンヌの湖の悪魔猫」の章のあらましは、以下のとおりである: (アーサーがローザンヌの土地に来たおりから)時さかのぼること四年前、ローザンヌの湖にある漁師が網を仕掛けると、30スー(フランス語版)の価値ある魚を捕えた。しかし神に供物するのを惜しみ、二匹目がさらに立派だとこれも惜しくなった。三匹目にかかったのは真っ黒い子猫だった。これを飼っているとネズミを捕ってよく働いたが、そのうち主人や妻を食い殺して野放しになってしまった。アーサーらは一同は山を登り、その猫がねぐらとする洞穴にいき、マーリンが甲高い口笛で誘い出した。猫は獲物だと思ってアーサーに飛びかかり、かざした槍の鉄先にかぶりついて折ってしまう。王は、その剣で頭上まっただなかに斬りつけたが、皮は切れども頭は無事で、猫は面食らって地面に退いただけだった。定本では、このときの剣は名指しされていないが、異本ではエスカリボールである。 アーサーの帷子は鎖は300も砕け、鮮血が流れて深手を負った。だが猫の前爪が盾にめり込むと抜けなくなり、王は両の前足を切り落とした。猫はなおも後爪を帷子にかけて喉元に食らいつこうとしたが、アーサーは後足も切り落として怪物をやっつけることができた。アーサーは、猫の前足がついたままの盾と、後ろ足がついたままの帷子(オーベルク)を櫃に収めて保管させた。また、この「湖の山」を「猫の山」(li mons du chat)と改名させた。 この作品は、中英語訳『中英語散文マーリン』もあり、同じ怪猫が登場する。
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