水平尾翼の働き
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/16 15:30 UTC 版)
「水平尾翼」も参照 単独翼をモーメントアーム(梃子)になる胴体に取り付け、後方に水平尾翼を取り付けた形が、通常の固定翼機の形式である。 単独翼のときと同じ条件を想定すると、重心位置は同じで、尾翼は揚力発生していない。この状態で突風などによって上を向き、迎え角が増えた場合、初期状態では揚力を発生しない(迎え角がゼロの)水平尾翼にも迎え角がつき、はじめて揚力を発生する。水平尾翼に揚力が発生すると、尾部が持ち上がって胴体が下向きになり、主翼の迎え角は減る。 何かの外力によって上を向いたときは、尾翼に揚力が発生して、尾部を押し上げ、はじめの向きに戻す働きが、尾翼と胴体をつけることによって生まれる。従って、主翼・尾翼がつながった形式は、姿勢が変わったときに元にもどす働きを内蔵していることを意味し、現代では安定したシステムと認識されている。 一般的な翼型の主翼では、迎え角が増えたときは風圧中心の前方移動があるため、姿勢を更に崩そうとする要素が発生する。但し、風圧中心の移動距離は翼弦の10%ほどであり、これに対して胴体の長さは翼弦の数倍で、モーメントアーム長に数10倍の違いがある。したがって、腕の長い尾翼の復元力は、主翼の風圧中心移動による姿勢を崩すモーメントよりはるかに大きい。 安定性が強すぎると操縦性が悪くなるので、無闇に安定性を強化できない。動安定まで考えると、実用上動揺の性質は収斂が早く(半減期が短く)、周期が長いことが望ましい。固定翼機の縦動揺は、短周期で収斂の早い運動と長周期で収斂の遅い運動の和である。前者は擾乱を受けた後短時のみの問題となりうるが、急激に消失するため、後まで残る長周期運動のほうが問題である。縦の動安定を得るためには、縦の静安定が正で適当な値の動的減衰を持たなければならない。
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