水位の禁厭論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2015/10/12 06:08 UTC 版)
水位は『禁厭記』や『巫医乃梯』、『巫医大意』、『諸禁厭集』の中で禁厭の原理がどのようなものであるか詳細に弁じている。水位は下記のように述べる。 余が云く、禁厭法にも善なる術も悪なる術もありて、薬の人を生し人を殺す品物のあるが如く、生かすも殺すも其の方を知れる人の心中にあるなり。然れども薬は精神の善悪を問わず一滴の液にて死するものなり。禁厭は法を以て無形をして感せしむる物なり。人の善悪を云はず行ふ人の一念にも関係せる事なり 水位の言葉によると禁厭(まじない)とは、人と人、物と物や人と物のはざまを交り合わせることによる物の変幻や意識の変革を起こすことである。水位は まじないとは、物に交え合わして其を禁じ厭つ名にして、善き事を持って悪事に交え合して、其の悪事を禁じ厭つも、また悪事を以て善事に交え合わして其の善事を禁じ厭つもマジナイにして、禁厭を以て人を苦しめ或いは生し或いは詛ひ殺す法もありて禁厭とも云へど其理に至りては一なるを善方に用いるをマジナイと訓し、悪方に使ふをトコヒと云ふなり。またノロヒともカジリ言い習はせしかども同一つなるが、大祓詞の天津罪・国津罪のなかに蟲物や蠱毒を用いて使役する蠱について触れており、蛇や蝦蟇そして蛞蝓の三虫を皿に入れて呪いしに初まる。これらをトコヒと申し厭魅と称す と述べている。 人を呪わば穴二つという諺があるように、禁厭は循環するものであるがゆえに、よくよく善悪を弁えて施行すべしと言っている。水位は禁厭法の真偽弁別については深長で、『旧事記』『倭姫世記』『上記』『秀真伝』『神遺方』『禁厭帖』などの書物を提示し、書籍は見様が大切で、活眼を開いて正否の区別を見分けなければ、正真の古伝も証念を生ずると言っておられる。古文献と言えども偽作せるものも多多あり、『日本書紀』の中にも偽り事多しと述べておられる。禁厭に関しても同じ事で、まじないの種類も多岐に渡り真正の物と言えども相似したり後人の詞を増加したものが類多く、真正の法と認められる処のものは、二百法余りだと申しておられる。 水位は『古事記』や『古語拾遺』に精通しており、そのきっかけともなった本居宣長の『訂正古訓古事記』を机上に置いて座右の書とし、読書百篇意自ずから通じる域に達していた。水位の論によると『古事記』上・中・下巻の中には禁厭の法についての具体的事例が数多記述されているが、当時の編集に携わった者が読むものに悪影響を及ぼすおそれから、あえてぼかして表現したと述べている。また、西洋の黒魔術・白魔術のような善悪の区別はなく、その術を施行する者の心の置き所の如何によっては邪ともなり正ともなり他者に影響を及ぼすものであるがゆえに慎重に対応すべきものと述べている。
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