殺虫剤仮説
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/18 09:26 UTC 版)
発生した事例間には、環境の共通要因も認められないとする研究もあるが、より一般的な仮説の1つに、農薬(具体的には殺虫剤)説がある。2012年までにネオニコチノイド系殺虫剤の農薬成分(イミダクロプリド、アセタミプリド、ジノテフランなど)と蜂群崩壊現象との因果関係を示す研究がヨーロッパを中心に多数発表された。 農薬による致死の経由には、蜂蜜と花粉の2つが考えられる。花粉経由説では、ミツバチが餌とするものに使用される農薬は、体内に貯蓄される蜂蜜経由でなく、花粉経由でコロニーに運ばれるため、花粉が媒介として考えられる。花粉は体の外側を使って運ぶのに対し、蜂蜜は体の内部を使用して運搬され、毒性があった場合、そのミツバチが死に至るはずだからである。もっとも、天然・人工を問わず、ミツバチにとって致命的であり得る化学物質の全てがミツバチの成虫に影響するわけではないが、もしそういった化学物質があれば、真っ先に幼虫に影響があるはずなのにCCDの事例では幼虫の死亡は発生していない。蜂蜜経由説では、幼虫は蜂蜜を食べず、大人のミツバチはそれに対してほとんど花粉を消費しない。CCDの症状は、もし環境から入る細菌や毒素が原因であるならば、幼虫が死亡せずミツバチの成虫が死亡している(もしくはどこかに行ってしまっている)ことから、それは蜂蜜を経由して入ってきている可能性が高いと説明される。 現在まで、CCDにおける農薬作用に関しては、養蜂家から提供を受けた調査結果によっている。しかし、ネオニコチノイドなどの農薬は、養蜂家不在の場合でも土に撒かれることから残留などが考えられるため、養蜂家不在の地でも、影響を受けたコロニーからサンプルを入手し直接調べる必要がある。
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