殺虫剤の問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/16 07:59 UTC 版)
同じ作用点の殺虫剤を連用すると、害虫が薬剤抵抗性を獲得することがある(害虫の場合は「耐性」とは言わない。殺菌剤に対する病原菌の場合は「耐性」と「抵抗性」の両方の語を用い、かつ意味が違う)。 駆除する目的の生物だけでなく、益虫も殺してしまう薬剤もあるため、生態系に与える影響や経済的損失(カイコ、ミツバチ)に注意が必要である。場合によっては、害虫より天敵のほうが死んでしまい、かえって害虫が増えることもある(リサージェンス)。それによる問題で、世界では規制されているが、日本国内では研究が進んでいないため規制はない。 殺虫剤の多くでは、昆虫などの生理機能によく反応する反面、哺乳類などには影響が少ない物質が選択される傾向が強い(完全に無害とは限らない)。家庭用殺虫剤では、特に安全性の高い物質が利用されるため、余程過剰に使用しない限りは問題がないが、農業や林業で用いられる殺虫剤は、高濃度で保管され、必要に応じて希釈される。この際原液に誤って触れたり、または撒布直後に触れるなどして薬物中毒を起こす事故もしばしば発生している。農業・林業関係者や防除業者が使用する薬剤に、長い時間触れる事で中毒する事故も後を絶たない。家庭内にある製品でも誤飲などの事故がおこりうるが、故殺目的で乱用されたケースも少なくない。ナチスがユダヤ人強制収容所で虐殺に用いた毒ガス・ツィクロンBも、元々は殺虫剤として開発された物である。 エアロゾル式の家庭用殺虫剤は、ケロシンが封入されており、広義の石油製品で可燃性もあるため、火に向かって噴射すると炎上する。またガス警報器などが誤動作する場合がある。その一方で燻煙式殺虫剤は、薬剤が白煙となって立ち上るため、火災報知機が誤作動するほか、火災と誤解される事がある。年数件程度は、燻煙式殺虫剤による消防への通報がローカルニュースになる。
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