死因審問の範囲
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/07/03 09:20 UTC 版)
死因審問の目的は、次の四つの点を明らかにすることである。 死者の身元 死亡の場所 死亡の日時 死因 証拠は、これらの問題に答えることのみを目的としたものでなければならず、それ以外の証拠は許容されない。死因審問の目的は、「死者がどのような事情の下死亡したか」という広い周辺事情を確かめることではなく、「死者がどうやって死に至ったか」という、より狭く限定された問題に答えることである。さらに、刑事上・民事上の責任について判断することは死因審問の目的ではない。例えば、在監者が独房で首を吊った場合、死因は首吊りであるといえば十分であり、刑務所職員の怠慢・不注意が当該在監者の心理状態に影響を与えたのではないかとか、それによって首吊りの機会を与えることになったのではないかといった周辺事情を調査することが目的ではない。もっとも、死因審問は、公益上要求される程度までは、事実を明らかにすべきである。 欧州人権条約2条において、各国政府は、「合理的に実行可能な範囲で最大限、生命を保護するための法、予防措置、手続及び法執行手段の枠組みを確立する」ことが求められている。欧州人権裁判所は、この規定を、公務員が関与している可能性のある死については、いかなるものも、独立した政府機関による調査が必要であると解釈している。1998年人権法 (en) の施行以来、このような事件に限っては、死因審問は「どのような方法で、そしてどのような状況で」死亡したかというより広い問題を検討することとなっている。 災害(例えばキングズ・クロスの火災 (en))の場合は、数人の死についてまとめて1回の死因審問が行われることがある。しかし、1887年にアイルランド・ミッチェルタウンで数人の抗議者が警察に射殺された事件では、共通で行われた検死陪審による認定が、死亡の時と場所がそれぞれ異なるという理由で破棄された。
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