歌文字の扱い
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/24 14:17 UTC 版)
風景を描いた絵の中に歌文字を変形・絵画化してさりげなく配し、図様と文字の組み合わせで歌意を表現するという、いわゆる葦手絵は平安時代から行なわれていた。蒔絵の図案としては、室町時代から歌文字を木の枝や岩陰に紛れ込ませ判じ絵のようにした歌絵が現れた。しかしそれらにおける歌文字の役割はあくまで、隠し味のように文学的な連想を促し機知的な面白みを表現することだった。本作品はそうした歌絵とは違って「文字そのもの」をデザイン要素としてはっきり前面に出し、タイポグラフィ的に配置した点であまり前例がない。すなわち草仮名が持つ装飾美を強調し図様の中にバランスよく配置することで歌文字を蒔絵の意匠効果の顕著な構成要素となした点で斬新だった このように図様の上に文字を散らし調和美を表現するという造形感覚は、宗達が巻物に絵を描き、その上に光悦が墨で和歌をしたためた一連の和歌巻(わかかん)に通じるものがある。しかし本作品とは違って和歌巻では絵と書の間に内容的なつながりは無く、横長の巻物ならではの絵と書のリズム感という点でも、本作品と和歌巻の間に直接的なアイデアの転移があったとは認めがたい。
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