歌文字
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/24 14:17 UTC 版)
蓋甲全体を使って、『後撰和歌集』恋部二に収められた源等の歌「東路の佐野の舟橋かけてのみ 思ひわたるを知る人ぞなき」が銀文字で散らされている。上の句は鉛板の部分に、下の句は上下の金蒔絵の部分に配置されているが、その区別以外は図様にお構いなく、さながら料紙に歌文字を散らした態となっている。また「舟橋」の二文字は鉛の橋を以って言外に示し、省かれている。 歌文字は厚い銀板を切り抜いた銀製金貝で、これを高く嵌め込んでいる。鉛板の部分は文字の形に切り抜いたところへ金貝を嵌め、鉛と金貝の隙間は錆下地で埋めている。蒔絵の部分は中塗面を文字の形に彫り込んだところへ金貝を嵌め、その周囲を錆下地で括ってから金蒔絵を施している。 仮名まじりの草書体は光悦の慶長10年(1605年)頃の書風とみられる。漢字は骨太で大きく、平仮名は細くやや小さめに書かれ、万葉仮名を織り交ぜるなど視覚的なアクセントが付けられている。起筆や跳ねまで丁寧に再現しており、金貝の縁は刀のようにシャープだが全体としては書体の柔らかい味わいが巧みに表現され、金工の技術の高さがうかがえる。
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