枠組条約
別名:枠組み条約
英語:Framework Convention
条約における基本原則や大まかな意図を規定した条約。枠組条約は主に環境問題などに関する条約を締結される場合に用いられることが多い。
枠組条約は複雑かつ越境的な地球規模の問題に関する条約で用いられることが多い。越境的な問題の解決にはより多くの利害関係者が条約に参加することが不可欠であるとされる。
枠組条約で基本的な原則を示した後、詳細を記した議定書などが追加で締結される2段階の過程を経る場合が多い。枠組条約は、一般的かつ基本的な原則が規定されているため、より多くの参加が見込まれ、参加国を一度程度囲い込むことができる効果があるとされている。枠組条約によって参加国を確保した後、個別の詳細規定を追加していくことで条約の適用範囲を次第に拡大していく手段がとられることが一般的である。
枠組条約による条約締結の2段階方式は多くの利害関係者を条約の当事者にする可能性がある一方で、個別の議定書の締結が進まないなど多くの点で限界もある。例えば、地球温暖化などに対する気候変動枠組条約と京都議定書においては、CO2削減という最終的な目標を共有しながらもアメリカが議定書に批准しないことがあった。
枠組条約
枠組条約(わくぐみじょうやく)は、まず目的と一般的な原則のみを定めた条約(枠組条約)を締結し、その細目は後に別個の議定書や附属書によって定めこれによって各国を法的に拘束しようとする条約のいち方式で[1][2]、海洋や環境保護の分野の国際条約に特徴的に見られる条約方式である[3]。
意義
現代の環境保護問題に対応するためには損害や危険の防止、損害が発生した場合の救済措置を定めるだけではなく、基準設定・監視・情報交換・予防措置までも規制の対象としなければならない[2]。しかし他の条約方式ではそうした内容の条約締結に時間がかかるばかりでなく、条約の適用範囲も当事国に限られるなど、急速に変化する環境問題に適切に対応することが困難であった[2]。しかし枠組条約方式では枠組条約で定めた一般的義務の履行を後に締結される議定書などによってより継続的に補完することができるため、科学技術の進展にともない各国の義務をより迅速に変化させて枠組条約の実効性をより向上させることが可能となる[1][4]。
類型
枠組条約と議定書の役割分担に関して2つの類型が見られる[5]。第一は、枠組条約では具体的に何も定めず締約国会議などといった条約が定める常設機構が議定書を採択し、その後に実際の効果を踏まえて定期的に再検討する方式である(「オゾン層保護条約」と「モントリオール議定書」など)[5]。第二は、とりあえず枠組条約自体で排出量などに関する規制措置の基準目標を定め、締約国会議がその細目について議定書を作成して各国が提供する情報を定期的に検討するという方式である(「気候変動枠組条約」と「京都議定書」など)[5]。
限界
枠組条約による国際協力には今なお限界がある[6]。例えば「モントリオール議定書」など、議定書の適用を普及させるため、規制措置を無差別・平等に各国に適用することを諦めて例外的な基準を認めたものがあることである[6]。同議定書では、発展途上国の場合には最大10年間規制措置の実施を遅らせることを認めている[6]。あるいは「気候変動枠組条約」は議定書の改正に同意することができない国は改正の発効から3年後に条約から脱退することができるとしている[6]。また従来とは異なり発展途上国の積極的な参加のために新しい援助制度が必要となった[6]。「モントリオール議定書」では先進国は途上国を技術的・財政的に援助することとされ、こうした援助が適切ではなかった場合には途上国は規制措置を実施できない旨を宣言できることとされた[7]。
出典
- ^ a b 筒井、96頁。
- ^ a b c 山本、673頁。
- ^ 杉原、319頁。
- ^ 杉原、390頁。
- ^ a b c 山本、674頁。
- ^ a b c d e 山本、675頁。
- ^ 山本、675-676頁。
参考文献
- 杉原高嶺、水上千之、臼杵知史、吉井淳、加藤信行、高田映『現代国際法講義』有斐閣、2008年。ISBN 978-4-641-04640-5。
- 筒井若水『国際法辞典』有斐閣、2002年。ISBN 4-641-00012-3。
- 山本草二『国際法 【新版】』有斐閣、2003年。ISBN 4-641-04593-3。
関連項目
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