本文の評価
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/15 14:52 UTC 版)
池田亀鑑は、「この古写本は、鎌倉時代の学者や歌人達が分担して書いたもので、非常にめずらしい本文系統のものであった」、「大和大沢家や紀州徳川家に伝わった写本のごときは、多数の『別本』を交えた鎌倉期の取合せ本であったが、今その行方を知らない」と記している。 「武田校合本」を三谷栄一によって転写させた「山岸採録本」によって本写本の本文を調査した山岸徳平は、「青表紙本に甚だ近い」が「青表紙本、河内本のいずれにも属さない」として陽明文庫本と並ぶ代表的な別本の一つに挙げていた。しかしこのとき山岸が比較の対象とした「青表紙本」とは、純粋な青表紙本ではなく河内本や別本からの本文の混入が見られる江戸時代の版本である湖月抄であるなど、現在の研究水準から見るとそのまま採用するには問題のある内容ではある。 同じ「武田校合本」から作成された「室伏校合本」に基づいて桐壺帖の本文分析を行った伊藤鉃也は、この伝阿仏尼筆本の本文の中に陽明文庫本の独自異文に近いものがいくつか含まれていることを確認しており、「青表紙本、河内本はもとより国冬本、阿里莫本、麦生本、御物本といったどの主要な古伝本系の別本と比べても陽明文庫本に近い」としている。 これに対し東洋大学の所蔵となった帚木巻を調査した石田穣二は、本写本を紹介したレポートの中でその本文を「極めて純度の高い青表紙本である」と評価している。 さらに上原作和は、東洋大学所蔵の帚木巻1帖のみの分析結果ではあるが、本写本を「明融臨模本よりもさらに純度の高い青表紙本原本に近い写本であり、これと比べると源氏物語大成以来青表紙本系統の写本の中で最善本であるとして底本に使われることの多い大島本などは精度の低い原本から離れた写本に過ぎない。」と評価している。
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