日本人における歴史的推移
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/17 18:31 UTC 版)
日本人の人類学的形質が縄文時代から現代に至る間に大きく変化した事が、第2次世界大戦後に鈴木尚(東京大学名誉教授 医学博士 形質人類学)らによって、主として関東地方から出土した人骨資料を基に明らかにされた。先に述べたように縄文時代人は鉗子状咬合であり、出っ歯はなかったが、弥生時代から次第に鋏状咬合が現われ、古墳時代には多くが鋏状咬合となったうえ、歯槽側面角も減少し70度以下になったため、出っ歯が多くなった。鎌倉時代では歯槽側面角が60度近くにまで落ち、著しい出っ歯状態になっている。以後はあまり大きな変化はなかったが、江戸時代中期頃から少しずつ歯槽側面角の増大が始まり、明治時代以降は急速に増大している。現代日本人の歯槽側面角は76.4度(下表参照) で、まだ突顎の範疇であるが、明治時代以前から見ると大きくなっており、出っ歯は見られなくなりつつある。 日本人(主に関東地方)の歴史上における歯槽側面角の変化(鈴木尚による)縄文時代古墳時代鎌倉時代室町時代江戸時代現代69.8度* 64.4度 60.4度* 62.6度 63.0度* 76.4度 (*はグラフから推算した値) 日本人の歴史で見られたこのような変化がなぜ起こったのかはわかっていない。乳幼児期のおしゃぶりの過使用や口呼吸、爪噛みなどが歯列の乱れを引き起こすという説はあるが、大きな時代的変化との関係は考えられない。日本人を含めたモンゴロイドは一般にコーカソイドやネグロイドに比べ相対的に歯牙が大型で(藤田恒太郎 『歯の話』 岩波新書 1965年、その他)、従って歯列も大きくなる可能性が考えられ、出っ歯になりやすいと見られるが、時代によって変化が生ずる原因は不明である。
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