新しい意味での社会性昆虫
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/16 05:54 UTC 版)
「社会性昆虫」の記事における「新しい意味での社会性昆虫」の解説
詳細は「真社会性」を参照 このようにして、不妊の階層が存在することが社会性昆虫の大きな特徴であることが示された。これは、哺乳類などに見られる社会と比べても特異的なものである。そこでこのような社会性を、真社会性と呼ぶようになった。それまで知られていた社会性昆虫の中で真社会性のものはハチの一部(とアリ)、シロアリに限られる。ハチとアリでの不妊カーストは働きバチ(アリ)であり、シロアリの場合は兵隊アリがそれに当たる。 E.O.ウィルソンによる真社会性の定義は 不妊カーストがいること 複数の世代が同居していること 共同して幼い個体の保育が行われること である。 真社会性を生む基盤が明らかになったことによって、他にも真社会性の昆虫がいるのではないかと考えられるようになった。血縁選択が働くためには、集団を作り、しかもその集団内部の血縁度が高ければいいのである。そして新たに不妊のカーストを持つ昆虫が発見された。アブラムシの仲間に、兵隊アブラムシを持つものが観察されたのである。アブラムシは、有翅の雌が飛んできて、植物上に定着すると、そこで単為生殖によって子供を産み、大きな集団を作る。アブラムシのある種は、生まれた子の一部が鋭いくちばしと鎌のような前足を持ち、天敵が近づくとそれにしがみついて防御をする。このような幼虫は、成長せず死ぬ。アブラムシの集団は同じ母親から単為生殖で生まれたクローンであるから、シロアリやハチ以上に血縁度は高く、真社会性が発達しやすいと考えられる。 その後、それ以外の昆虫や、昆虫以外でもエビ類のテッポウエビの仲間と、哺乳類のデバネズミなどにも真社会性が発見されている。これらは個体が分散せず、近親婚を行うことで個体間の血縁度が高く保たれているのではないかと推測されている。真社会性は昆虫だけのものではなくなっており、まとめて真社会性動物、真社会性生物とよぶ。ただし生物学では区別せずに「社会性」と言った場合は真社会性を持つものだけを指す場合もある。この文脈ではヒトは社会性動物ではない。哺乳類で真社会性を持つのは現在のところハダカデバネズミのみである。
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