新しいレーザー核融合方式
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/17 10:07 UTC 版)
「レーザー核融合」の記事における「新しいレーザー核融合方式」の解説
レーザー核融合は燃料球の爆縮法により次のように分類される。 レーザー照射方式点火方式直接照射 中心点火 高速点火 間接照射 中心点火 直接照射(直接駆動とも呼ばれる)では燃料球に直接レーザーが照射される。一方、間接照射(間接駆動やX線駆動とも呼ばれる)では燃料球をホーラム(hohlraum)と呼ばれる高Zで作られた外枠に入れ、そのホーラムの内側にレーザーを照射し、燃料球はホーラムから出るX線によって照射される。大阪大学やロチェスター大学では直接照射方式が、ローレンスリバモア国立研究所では間接照射方式が主に採用されている。 中心点火と高速点火の違いは、一度のレーザー照射による爆縮で点火に至るか否かによる。従来の中心点火方式では高い球対称爆縮が要求され、これがレーザー核融合開発の大きな障害となっていた。一方、一度爆縮された燃料球が慣性で静止している極めて短時間に(高速に)超高強度・超短パルスレーザーを照射することで、点火に至らしめることができることが比較的古くから考えられていた。これを高速点火方式と呼び、現在大阪大学レーザー科学研究所でこの方式の研究が進められている。 近年高速点火方式が可能となった背景には、CPA(Chirped Pulse Amplification、チャープパルス増幅)技術の発明により生み出された超高強度・超短パルスレーザーの出現がある。超短パルスレーザーに高エネルギーを詰め込むことは従来不可能と言われてきたが、CPA技術により可能となった。1015W を超えるレーザー装置が大阪大学などで現実のものとなっている。高速点火方式の利点は、従来の中心点火方式と比較して、より小さなレーザー装置でより大きな利得(投入したエネルギー量と反応で得られるエネルギー量の比)が期待できることである。 また、高速点火方式は、爆縮による点火を行わないためレイリー・テイラー不安定性を伴わず球対称性を確保する条件が緩和される。 このような大出力のレーザーの登場により、高強度場科学や高エネルギー高密度物理(High Energy Density Physics)、高エネルギーレーザー科学と呼ばれるような新たな分野が開拓されようとしている。前述の超高強度・超短パルスレーザーを集光することで、その光強度は1018W/cm2 から 1021W/cm2におよぶ。このような高強度場はかつてないものであり、超新星などで起こる現象を実験室において模擬することのできる実験室宇宙物理やレーザー加速器のような分野を創生している。
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